玲編 朋群製AI
新暦〇〇三五年十月十九日
俺がそんなことを考えている間にもホビットMk-Ⅱらは開墾作業を淡々と進めている。不平不満を口にせず、愚痴もこぼさず、ひたすらに。
生身の人間だとこうはいかないから、
<生身の人間だけで集落を建設する場合のシミュレーション>
とは必ずしも言い難いかもしれないが、まあ、人間と大差ない力と強度しか持たないホビットMk-Ⅱでもそれができるなら、ペース配分さえしっかり考えればできなくはないだろう。
それに、ホビットMk-Ⅱを応援として派遣すればいいしな。
ホビットMk-Ⅱらは、開墾と同時に、自分達の待機場所としての<テント>も設営した。テントと言っても、既製品のそれじゃない。現地で調達した枝や葉を何重にも重ねた屋根を、生えている木を利用して架け、雨などが降ってきたらそこに退避できるようにしたんだ。
なにしろホビットMk-Ⅱは、防水性能は決して高くないし。今の地球人社会の精密機械は、特に水濡れなどに注意が必要な電子部品などについては丸ごと樹脂でコーティングして完璧な防水性能を発揮している。まあ、一部の安価なものはそこまでの対処はしてないとはいえ、ある程度以上の価格帯の物についてはそれをしてないと売れないから。
だが、この<コーティング用の樹脂>がここじゃ手に入らない。電子部品が出す熱を逃がさないといけないから、コーティング自体が放熱も行ってくれる特殊素材なんだ。これが、
ただ樹脂でコーティングすればいいってわけじゃないんだよ。
なので、電子部品もそうだが電装系がとにかく完全防水じゃないから、多少濡れてもカバーが防いでくれるからいいものの、土砂降りの雨に打たれたり水没したら十中八九壊れるんだ。
そういう意味でも<下位互換>なんだ。ドーベルマンMPMも、完全に水没するとさすがにマズいが、雨に打たれる程度ならまあ大丈夫には作ったんだけどなあ。
新しいロボットを作る度に下位互換になっていくというのは非常に情けなくもあるものの、取り敢えず今の条件ならこのホビットMk-Ⅱが最低ラインにはなると思う。ここから新しい素材を発掘できたりすれば、さらに性能を上げていけるだろう。
たぶん。
なお、このホビットMk-Ⅱらにも、新しく作ったAIが搭載されている。それらを、
ちなみに、<AI>が発明された当初はあくまでソフトウェアのことを言ったらしいが、二十二世紀頃にはハードウェアの時点からAI専用の設計が行われるようになったこともあり、それ用のハードそのものを<AI>と称するようになっている。
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