玲編 ダミーの集落

新暦〇〇三五年十月十八日




本来、アリゼドラゼ村も、アリニドラニ村も、アカトキツユ村も、<俺達の集落>を、きょうみずちがく夷嶽いがく牙斬がざんばんと戦ったヒト蛇ラミアといった<怪物>から守るための<ダミーの村>として用意したはずのものだった。なのに実際に住人ができてしまったので、さらにそれを守る必要が出てきてしまった。


とは言え、牙斬がざんがビアンカを襲わなかったことや、ルコアは未来みらいを庇ったことで負傷したもののルコアそのものを狙っていたわけじゃない様子から、<人間>の姿をしている者以外については明確には攻撃対象じゃなさそうなので、その分はまだ安全なのかもしれない。


さりとて、きょうみずちがくばんと戦ったヒト蛇ラミアについては、割と手当たり次第に襲っている様子だったのも事実のため、


『人間と比べれば狙われる確率は低くなる可能性がある』


というだけで、必ずしも安全とは限らないけどな。


だからさらに<ダミーの集落>が必要になってきた。それは同時に、さらにロボットが必要になってきたということでもある。


で、コーネリアス号にて改良に改良を加えてきた、


<ホビットMk-Ⅰ>


の出番ということだ。


というのも、運用しデータを蓄積しては改良を加えていくという地道な作業を一年半ほど続けたおかげで、今では日常の作業についてはだいたい行えるようになってきたんだ。機体もほとんどが超々ジュラルミンをはじめとしたアルミ合金と代用プラスチックに置き換わり、以前のように一日に何度も転ぶこともすっかりなくなったんだ。


そんなホビットMk-Ⅰをベースに<ホビットMk-Ⅱ>を制作。量産を開始していた。


そしていよいよ今日、ホビットMk-Ⅱ二十機をアリアンで輸送。アカトキツユ村の南西五キロに位置する<集落建設候補地>の一つへと下ろす。


今回は、


『ホビットMk-Ⅱだけで集落の開墾及び建設は可能か?』


ということを検証するために派遣した。それはもちろん、<ダミー集落の建設>も兼ねてのことである。


今日もめいひかりに絵本を読んでもらっていて、それをれいえいも聞いている。なお、萌花ほのかが昼寝している間に絵本を読むようにしてるが、しかし寝てくれない時などにはじゅんとイレーネに萌花ほのかを見てもらってる。


これによりゆっくりと絵本の朗読ができるんだ。


それをBGMに、アリアンからホビットMk-Ⅱニ十機が収納されたコンテナが下ろされるのをタブレット越しに見守る。さらにここには、野菜くずや村々の開墾時に伐採した木や刈り取った雑草を材料にしたバイオマス燃料を使った小型火力発電所も建設することにしている。


各々の村での電源確保は重要な課題だしな。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る