玲編 根源的な宿業

地球人の親は、子供に構うことを厭う傾向にある。それを、


『自立心を養うため』


とか詭弁を弄して、面倒だからと手を抜きたがる自分自身を正当化するそうだ。そしてメイトギアをはじめとしたロボットは、そんな親の手抜きを補ってくれる。


おかげで、


<構ってもらいたくて問題行動を起こす子供>


は減ったとも。学校などでも、教師の補佐役として配備されているメイトギアが、問題行動を起こす子供には常に傍で待機し、問題行動を起こす兆候が見られた時には気を逸らすことで他の生徒に被害が及ばないようにしてくれる。


そうだ。<問題行動を起こす子供のため>というのと同時に、


<他の生徒に被害が及ばないようにするため>


に、手厚いサポートが行われるんだ。それを、


『不公平だ!』


とか言うのもいるそうだが、そうじゃない。手厚くサポートすることで周囲への影響を抑えているんだ。なんでそれが分からないんだろうな。と言うか、それを、『不公平だ!』と感じること自体が、


『自分こそを構ってほしい』


という願望の表れだって気がするよ。自分が構ってもらえないことに文句を言ってるだけに過ぎないってな。


構ってもらいたいなら素直にそう言えばいいのに無駄にカッコつけたいがために持って回った言い方をする。そのやり方自体が、


『言わなくても自分の気持ちを察してほしい!』


って<甘え>の具現化なんだろうに。


だから俺達は、『構ってほしい』なら素直にそれを言葉や態度で示すことも大事にしていきたい。『言わなくても察しろ!』というのは当たり前にはしない。そういうことをするのも中には出てくるだろうが、そもそも言葉がしゃべれない者は言葉などで伝えるのは難しいからこっちが察するしかないが、少なくとも言葉や態度を使いこなせる者はちゃんとそれで示すようにしたい。


キャサリンはまだ、それをうまく言葉で説明できないからそのまま行動に移してしまうんだろう。でも、今はそれでいい。今、彼女はいろんなことを学んでいる真っ最中だからな。それらを学んでいる真っ最中の子供が上手くできないのは当然のことだ。そんなことも分からずに<大人>なんてやってられるか。


れいも、マンティアンとしてはもう<成体おとな>なんだとしても、<人間>としてはまだ実年齢は七歳程度だ。『人間として』上手くやっていけないのも当然だし、そのことを責めるつもりもない。


それぞれが抱える<事情>に配慮できなきゃ人間の社会ってのは上手く機能しない。それは<人間という種>が抱える根源的な<宿業>なんだ。


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