玲編 答
『彼女のための体制が必要』
にはなったものの、だからといって何か特別な対処をするのかと言えば、実はそうでもない。基本はただ見守るだけだ。これまで以上に慎重に緻密に。
何しろデータがないんだよ。
<地球人と同じ姿を持つ純血のマンティアンの妊娠・出産に関するデータ>
が。あればそれに則って具体的な体制作りもできるもののないんだから慎重に緻密に見守り、状況に合わせて即応するしかない。
俺達の毎日は、まあそれの繰り返しだな。その際にエレクシア達がデータを蓄積してくれてるから、次に同じような事例があった時には参考になる。
もっとも、その<同じような事例>はそんなに頻繁にあるわけでもないというのが悩ましいけどな。とは言え、一度得たデータは決して忘れないってのがロボットの強みでもある。人間は、一度きりの経験だったりすると時間と共にそれが薄れていってしまうからな。
まあそれがあるからつらかったり悲しかったりという経験も乗り越えられるという面もあるので、痛し痒しではある。
俺だって、
そして今度は、まさに<俺の子>との別れが近付いている。その事実を思うだけで気が変になりそうだ。どれだけ生き死にを見てきても、それは慣れてしまえない。少なくとも俺は、な。
一方、AIやロボットには<心>がないから、つらいと悲しいとかも感じない。あるがままをあるがままに受け止めてデータとして残していくだけだ。そして地球人はそのデータによって様々なことを理解する。地球人自身の愚かさについても、それによって改めて客観視できるようになってきた。
これもまた事実だ。
そんな中で、新しい命を迎えようとしている。新しい命を迎えるからこそ、死と折り合えるんだというのを実感する。
おそらく、孫ということになる<
俺はそれを大切にしたい。
『なぜ子供を生むのか?』
『子供を生むことに何のメリットがある?』
そんなことは、それぞれで勝手に答を探せばいい。だが、自分が見付けた答が他者にとっても<答>になるとは思わないことだ。
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