玲編 同情する気
せっかくだから、ケインとキャサリンのことにも触れておこう。
と言っても、こちらの二人については、体が大きくなった以外には目立った変化はない。ケインは相変わらずビアンカにべったりだ。彼女の本体の背中にしがみついて離れようとしない。相当な甘えっ子だな。それと同時に、ビアンカと一緒にいることで、ビアンカの視点でいろいろなことを見ているようだ。
たくさんのことを、ビアンカの背中に乗ったまま、ビアンカの振る舞いとも合わせて見てるんだ。ビアンカが家族や仲間とどう接しているのかを、ケインはしっかりと見てくれている。
だからか、表情がもう完全に人間の子供のそれだった。彼に比べると、イザベラやキャサリンは明らかに怖い。
それでいて、自分の周りにいる自分に対して敵意を向けていない相手についてはちゃんと<仲間>だと思ってくれてるのは分かる。これもまた、
むしろ地球人の子供の方に、やけに周囲の人間に対して攻撃的なのがいるよな。些細なことで殴りかかってきたり大声で怒鳴ったり。それは本人の資質の影響もありつつも、結局は本人の周囲の人間の振る舞いを真似ているだけだという事例が非常に多いというのも分かってる。
特に親が、他者に対して攻撃的であったりすると、覿面に。
親の暴力に怯えておとなしくなる事例ももちろんあるものの、
『おとなしそうに見えて実は……』
という事例も多かったりするんだよ。暴力的に他者を支配しようとする人間は親もそうだったりという事例はとにかく多い。
子供の家庭内暴力についても、実際は、子供が幼かった頃に親が暴力的だったり支配的だったりしたのが返ってきてるだけだったりな。
外面が良く、周りからは<いい人>と見られていても、ただ体裁を取り繕うのが巧いだけという場合も少なくない。
俺の周りにもそういうのがいたな。小学校の頃から同じ学校に通ってた奴が、親に対して怒鳴り散らして顎でこき使ってたりしたんだが、実はそいつが小学生の頃には、母親がヒステリックにそいつを怒鳴りつけてて、でも父親は家のことは母親に任せきりで無関心で。
単に自分がやってたのが返ってきただけだなと思って、同情する気にはなれなかったよ。
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