玲編 三匹の山羊のブルーセと腹をすかしたトロル

『小さい山羊のブルーセに言われたトロルは、


「そうか。じゃあお前を食べるのはやめておこう。とっとと行ってしまえ!」


そう言って小さい山羊のブルーセを追い払いました。おなかが減っていたトロルは、しっかりと食べたかったのです。


そこに中くらいの山羊のブルーセが丸太橋を渡り始めます。するとトロルはまた、


「お前を一飲みにしてやるぞ!」


と脅しましたが、中くらいの山羊のブルーセは、トロルに対して、


「なんだい? 君は僕くらいので満足できる程度にしかおなかが減ってないのかな? この後、もっと大きくて食べ応えのある奴がくるのにさ」


言い放ち、それを聞いたトロルは、『もっと大きいのが来るのか』と喜んで、


「なら、お前も食べるのはやめておこう。邪魔だからとっとと行ってしまえ!」


と、やっぱり追い払ってしまいました。今のはちょっと食べ応えがありそうな気もしましたが、もっと大きいのが来ると聞いてはどうでもよくなったのです。


するとそこにメキメキメリメリと丸太橋をきしませて、大きな山羊のブルーセがやってきたのです。


「お前、俺の橋を壊す気か!」


そう怒鳴ったトロルに、


「橋は壊さない! 代わりにお前をめちゃめちゃに壊してやる!!」


トロルにも負けない大きな唸り声を上げて大きな山羊のブルーセは、その立派な強い角を振りかざし、トロルの体をたちまちバラバラにしてしまったのです。


おなかが減っていたことで、トロルは力が出せなかったのでしょう。先に小さな山羊のブルーセと中くらいの山羊のブルーセを食べていたらもっと力が出せて勝てていたかもしれないのに、欲をかいたことでこんなことになってしまいました。


そして三匹の山羊のブルーセは山へと向かうことができて草をたくさん食べ、大きく太って冬を乗り切ることができたのでした』




なるほどこれはいかにも教訓染みた話だな。


『欲をかいたり先のことを見すぎると思わぬ失敗をしたり落とし穴にハマったりする』


ということなんだろう。俺も気を付けなきゃいけないなと思う。


先を見ることも大事だが、それで足元を疎かにしちゃいけない。


だから、先のこと見つつも目先のことも忘れたくない。めいが命を終える時のことも考えつつ、今の彼女が何を望みどうしたいと思っているかというのもしっかりと受け止めなきゃな。


こうやってひかりに絵本を読んでもらって安らかな気持ちになりたいのなら、それに応えてやりたいんだ。


と同時に、れいえいも一緒に絵本を見たいなら、そうしてやりたいよ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る