灯編 社会を構築する上で必要なこと
だいたい、
『厳しい環境こそが優れた個体を作る』
なんてのが本当なら、<訳の分からない生態を持つ生き物>なんかいるわけがないだろうが。
<些細なことでショック死する生き物>
とか、
<他の生き物に寄生することでしか生きられない、寄生に失敗したら死ぬしかない生き物>
とか、
<ちょっと激しく動いたら上昇した自分の体温で死ぬ生き物>
とか、なんでそんなのがいるんだよ。そんなのが<優れた生き物>か? それが、
<環境に適応できたという意味では優れた生き物>
だって言うなら、
<過保護な環境に適応した生き物>
ってのも、十分に優れた生き物のはずじゃないのか?
『自分の子供を厳しく育てて強くしようとしていた親が、ちょっと世間から責められただけで泣き言並べて逃げた』
なんて、笑い話にもなりゃしない。それのどこが『強い』んだ? 明らかに弱いだろう?
『十分に想定できる危険は極力回避する』
『自分の家族や仲間が危険に曝されてたら即刻対処し安全を確保する』
そんなのは野生でも何も珍しくない普通の対応だ。
『獅子は我が子を千尋の谷に突き落とし這い上がってきた子だけを育てる』
とか、ただの<伝説>に過ぎない話をありがたがるのは人間だけだ。そもそもその伝説に出てくる<獅子>は、<ライオン>のことじゃないらしいな。
結局、自分が手抜きをしたい言い訳に、
『厳しく育ててる』
と言いたいだけだろう? 野生じゃ確かにリソースが十分じゃないから結果として厳しい対応になるだけで、別にわざと厳しくしてるわけじゃないんだけどな。
子離れのために厳しく接するのだって、子供が十分に自力で生きていけるようになるまでちゃんと育ててからするだけだぞ?
なのに地球人の場合は、自分が楽をしたい手抜きをしたいがために『厳しく育ててる』などと寝言を並べる。それが通用しないことを俺はここで学んだよ。
『優しいだけじゃダメ』
なんて話は、そもそも『優しい』のと『優柔不断』の区別もつけられてないから出てきた話だそうだな?
まあ、俺はそれもあって『優しい』とか『優しさ』って言葉が嫌いであまり使わないんだけどな。
とにかく、
<社会で生きていく上で必要な振る舞い>
を示すことが必須だからだ。
身勝手で自分ばかりが楽をしたいと考える人間が溢れた社会がどうなったか、歴史が証明している。
子供を守るのは、子供をこの世に勝手に送り出した者の務めだ。
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