灯編 パニック
新暦〇〇三五年七月十日
俺も、早くに両親を事故で亡くし、難病により次第に怪物と化していく妹を看取り、妹の治療のために膨らんだ借金を返すために必死に働き、って厳しい境遇を生き延びてきた人間だが、ここで自然の中に裸で一人放り出されたら、一日と生きてられないんだよ。
そうならないためにありとあらゆる対策を講じてきた。自分を守るために散々手を尽くしてきたのに子供の安全を守るためには動かないとか、いや、それ、普通に<最低>だろ。
だから子供達を守るために手を尽くすのは当然としか思わないんだ。
『知らない相手は怖い』
んだよ。恐怖を感じてるんだ。そんなケインを追い詰めれば、彼だって生きるために反撃だってするだろう。幸いそこまで追い詰められなかったからそうしなかっただけで。
それを証明するような<事件>があった。と言っても、誰かが怪我をしたとかってわけじゃないが。
この日、夕食を終えた直後、
で、
「ギャーッ!!」
パニックを起こしたケインが叫びながらドーベルマンMPMに噛み付いたんだ。
まあ、幸い、代用プラスティック製のカバーに噛み付いただけだから別に破損もなかったし、ケインも怪我はなかったものの、
「何事!?」
と少し慌てて。
三人も気を付けてくれてたんだが、ほんの一瞬、誰もケインのことを見てない状態になってたってのもあった。だからドーベルマンMPMがいなけりゃケインと
ケインにとっては自分が生きるためにしたことだ。それを責めるつもりもない。
「ごめんね、ケイン。びっくりしたよね」
一番に駆け付けて膝を着き手を差し伸べてくれた
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