灯編 セシリアからの提案
そして皆で昼食をとって、しばらくまた
「またね……」
「また遊びに来てね」
「もちろん、遊びに来るよ」
と手を振って、イレーネと共に森へと入っていった。河岸で待機していたアリアンに乗り込むためだ。
それから三十分足らずでビクキアテグ村に戻り、
「着いたよ♡」
家族の光景がそこにはあった。ここに、ケイン達も加わってくれるだろうか。
などと、心配しても始まらない。なるようになるし、なるようにしかならないさ。
で、そのケイン達の方は、ビアンカが里帰りしてることなど露知らず、育児室の中で我が物顔で振る舞っていた。
でも、元気ならそれでいいさ。
そしてビアンカが食事を与えるために部屋に入ってくるとそわそわし始める。食事をもらえることがもう分かってるんだ。
基本的にはそれぞれのお気に入りの場所からは動かないものの、ビアンカが近付いて生肉を差し出すとそれを受け取り、ガツガツと貪り始める。
そんな食事のシーンだけ見ているとおっかない印象もあるとはいえ、やっぱり落ち着いてきてると思う。
するとケインが、生肉を受け取った後、ビーズクッションの上から下りてきて、肉を食べながらビアンカの足元に来たんだ。別に何かをするでもなく、何かを狙っているような感じでもなく、ただ、そこで肉を食べているだけ。
「ケイン、どうしたの?」
ビアンカが話し掛けると、肉を齧りながら彼女を見上げて、何らかのアイコンタクトを送るような感じで見詰めてくる。
その様子を、セシリアが傍で見ていた。万が一、ケインがビアンカに襲い掛かったりした時に、間に入って庇うためだ。
運動性では要人警護仕様機には遠く及ばないものの、バイタルサインを常時取得していることで、攻撃性が高まるような兆候はすぐに察知できて、それに合わせた動きもできる。
けれど、ケインからはその兆候はまったく見られなかった。だから、
「外に出してみてはいかがでしょうか?」
セシリアからの提案が。孵化してから約一ヶ月半。ついにこの時が来たということか。
最初の予定では、このまま育児室の中で、
少なくとも、ケインについては。
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