灯編 他者への気遣い
感情が昂ってついセシリアの指や手に噛み付いてしまったりすることもあるイザベラとキャサリンだが、そうした後でハッとなって自分の居場所に逃げ帰ったりするというのは、自分が何か<マズいこと>をしてしまったのだと理解してるからだろう。
その傾向が見られ始めたのは、実に朗報だった。
『相手に怪我をさせたかもしれない』
ことに驚いて狼狽えるなんてことはないんだ。その必要がないからな。
『他者を気遣う』
理由がないんだよ。たとえ相手が同じ
他者を気遣うような振る舞いが見え始めただけでもう、
『
ということだ。
とは言え、すぐに結論を出すのは性急に過ぎる。もっとじっくり様子を確かめて、十分な確証を得てからだな。
さりとて、ビアンカからでも普通に生肉を受け取るから、自分達よりずっと大きな<アラニーズ>もすでに恐れていないので、もう心配はしていない。
『外敵に対する警戒が弱くならないか?』
と心配するのもいるかもしれないが、なに、人間の子供だって成長の過程で、<危険なもの><そうでないもの>を学んでいくんだから、人間並みの知能を身に付けていくなら大丈夫だろう。
<人間>として生きるなら、そんなに<本能>に執着する必要はないだろ? 地球人だって散々、
<動物としての本能>
を否定してきたじゃないか。本来なら乱交型の生殖を行う動物のはずなのに、
<一対一の婚姻関係>
に拘るし、そのために<浮気><不倫><不貞>という概念を作り出したじゃないか。しかも、<非婚>や<子供を持たないという生き方>も肯定した。
<浮気><不倫><不貞>関係ではそれこそ刃傷沙汰というトラブルも生みつつも、<非婚>や<子供を持たないという生き方>の方については、ロボットの発展もあって大きなリスクにはなってない。なら、
『本能だけに縛られる必要もない』
だろう? むしろ本能だけに従ってればいいのなら、<獣>に戻るべきだしな。
だから『人間として生きる』なら、<外敵への対処法>については<知識>として身に付けてもらえばいいんだよ。
幸い、そのエキスパートが実の母親だし、血は繋がってなくても父親もそうだし、立場上は<義理の母親>に当たるであろう
それに、先日の老
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