灯編 おめでたムード

さて、いよいよあかりについて詳細に触れていこうか。


そのためにはまた時系列を巻き戻すことになるが、改めてご容赦願いたい。








新暦〇〇三四年十二月一日




ビアンカが黎明れいあを生んで三日が経ち、さすがにヒト蜘蛛アラクネとほぼ変わらない肉体を持つがゆえに回復も早く、すでにほとんど問題ないまでになってた。


だが逆に、黎明れいあについては、成長が明らかに、異母兄である未来みらいよりも遅かった。未来みらいはもうその頃にはほぼ首も据わってたが、黎明れいあにはその気配すらない。ひょっとすると地球人に準じる成長速度かもしれないとこの時点では感じていた。


結果としてそれは半分当たってたものの、それでも、地球人の赤ん坊に比べれば格段に成長も早かったけどな。


まあそれについてはおいおい触れていくとして、未来みらいに続いて二人目の<村生まれの子供>となる黎明れいあが生まれたことでビクキアテグ村はそれこそおめでたムードだった。


未来みらいに比べれば成長も遅いものの、久利生くりうもフォローしてくれるし何よりモニカとテレジアの手厚いバックアップがあるから、何も心配要らない。


夜の間だって、母乳を与えるために二時間おきぐらいに起きなければいけなかったものの、おむつ替えなどについてはモニカとテレジアがやってくれるので、ビアンカは寝惚けた状態で黎明れいあに乳をやってるだけでもよかった。


それにビアンカ自身、元軍人だってこともあって、この種の過酷な状況の経験もしてきているので、それも功を奏してるようだ。


しかも久利生くりうも、別に寝ててもいいのに起きてきてビアンカを労わってくれたそうだし。でも、その『労わってくれる』ということ自体が大事なんだ。それが母親の精神の安定に繋がるし、その後の夫婦関係にも影響するのは分かってる。


この時点での父親の態度が信頼度にものすごく関わってくるんだよ。


ま、今はロボットがフォローしてくれるからかなりマシになったそうだが。


ちなみに、今、ビアンカと久利生くりう黎明れいあの育児のために使っている家は、かつては二人の<愛の巣>として使っていたものだ。それをそのまま<育児部屋>として使ってるわけだな。


だから当然、ルコアはあかりと一緒に寝ている。ルコアからすれば、


『母親を妹にとられた』


状態ではあるものの、それについてもあかりとモニカがフォローしてくれるからなんとかなってる。黎明れいあに対して嫉妬する必要がなくなってるんだ。


もっともそれも、ルコアの精神状態が安定してからのビアンカの妊娠・出産だったからというのもあるが。


しかし、この後、思いがけない事態が起こるんだよな。


いや、<不幸>という意味のそれじゃないんだが、再び<驚天動地の事態>が起きるんだよ。


あかりでさえ驚くような事態がな。


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