新編 完成予想図

そんなわけで、いずれ必要になってくるであろう、純<惑星朋群ほうむ産ロボット>の試作に向けて準備を行うことにする。と言っても、機体側の各部を制御するためのAIについては、さすがにまだそれを作るために必要なレアメタルの類が発見できていないので、コーネリアス号に残されている材料を用いて作ることになるゆえ、完全なそれにはならないが。


設計そのものは、ドーベルマンMPMをベースにすればいい。とは言え、重量増および素材の強度などの問題から単純にそのまま材料を置き換えるだけでは済まないけどな。


何しろ、材料の性質そのものが設計に反映されている部分も多いわけで。設計を担当したエレクシアでさえも、


「私は純粋な設計用AIではありませんので、十分なデータを持っていません。ゆえに、何度も試作を繰り返し、その都度、データを採取して精度を高めていく必要があります」


とのことだった。


そりゃそうだ。ドーベルマンDK-a、アリスシリーズ、ドライツェンシリーズ、ドーベルマンMPMは、ロボットが、自らを応急修理する必要が出た時などのために持っている基礎的な情報を基に設計したのであって、エレクシア自身にロボットそのものについて広範かつ専門的な知識があるわけじゃない。あくまで現状で自分が持っている知識を応用しているだけだ。


しかも、彼女が運用されていた時点での技術レベルが基になっているので、素材などについても、メイトギアがメイトギアとして運用され始めた以降に用いられたものが基準になってる。それこそ、二十世紀より以前に使われていた素材のみで、実用に足るロボットを作るための設計なんて、そもそも想定されていない。


「蒸気機関やガソリンエンジン、ディーゼルエンジンを設計するだけであれば、基礎理論はデータとして持っていますので難しくありません。それこそ<子供の玩具おもちゃとしてのロボット>なら、数秒で設計できます。ですが、実用性のあるロボットとなると話は別です」


と彼女が言うのも分かる。


となれば、それこそ、先人達が今のロボットを作り上げていった道を順に辿るしかない。ゴールは見えているので、そこに到達する答を探していくって感じか。


で、まずは、数値だけを当てはめて設計してもらったんだが……


「これはまた……いや、本当に<子供の玩具おもちゃ>だな……」


そう。タブレットに表示された<完成予想図>は、求められる性能を実現するためにそれ以外の一切を慮外としたからか、<機能美>のようなものさえほとんど感じられない、お菓子の空き箱を組み上げたかのような、実に拙い印象のロボットなのだった。


四脚二腕なのはドーベルマンMPMと同じなんだが……なあ……


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