新編 不思議な感覚
俺とシモーヌとエレクシアと
ローバーが動き出すと、
「うひっ!?」
我が子と言えどその辺りはすぐにはピンとこない。今まで興味も示さなかったクセに。
「ううあ、うあ、ういう」
後部座席で窓の外を見ながら何かを呟いた。
「
エレクシアが翻訳してくれる。
<言葉>というものを解析する能力に長けたAIは、たとえ自身のデータサーバにない言語であっても、しばらくそれに触れているだけで解析してしまう。この世界の<獣人達>も多くが非常に簡単で語彙も少ないものの<原始的な言語のようなもの>を持つ種が多く、その中でもパパニアンは言語能力が高いと見られているんだ。
ただし、群れごとの<訛り>がひどいので、体系化することは事実上不可能だけどな。個体ごとの<癖>も解析できるAIを搭載しているロボットならではの芸当だ。特にメイトギアは、人間と緻密なコミュニケーションを取る必要があるから、他のロボットよりもさらに言語能力は高く設定されているんだと。
「なるほど。座ってるのに移動してるというのは、パパニアンにとっては不思議な感覚だろうな」
にしても、どうしてわざわざそんな、パパニアンにとって<異様なもの>であるローバーに乗ろうなんて気を起こしたのか。
そんな俺の困惑をよそに、
「ひぎゃっ!?」
っと、ガチの悲鳴を上げてパニックを起こしローバー内を逃げまどったりもしたが、それもまあすぐに落ち着いて、いよいよアカトキツユ村へと到着した。
すると、そこには、立派な<集落>が出来上がっていたんだ。
<家>そのものはまだ五軒だけだが、本当に人間が暮らしている小さな集落にちゃんと見える。
そして、あんずとますらおが、
「ようこそおいでくださいました」
「ありがとうございます」
と、丁寧に挨拶してくれたのだった。
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