新編 過干渉

ほまれも、パパニアンとしては異色の存在だと思う。他の個体を気遣い調和を重視することで群れを安定させるというやり方は、実は例外的だ。大抵は、力で従えようとするし、その結果、弱い個体をイジメることでストレスを発散しようとする行為が横行する。


ほまれの群れは、それがほとんど起こらない。強いストレスを抱えてる個体をほまれ自身が気遣うからだ。


これは、繊細な気遣いが要求される難しい対応なので、ほまれあお、今ではみこともできるものの、それ以外だととどろきが辛うじてという感じだろうか。


とどろきも、たもつの件に関してはお見事だったと思う。


正直、このまま今のやり方が定着していくかどうかは未知数だが、少なくとも今はほまれの群れは平穏だ。ほまれからとどろきへのボスの座の委譲も順調に進んでいるようだ。


それでも、ほまれは、おおむねパパニアンとしてはまっとうな生き方をしていると言える。


対してあらたは、レオンであるりんつがい、群れを作ることもなく彼女とだけ楽しげに暮らしていた。残念ながら子を持つかどうかで意見が対立し別れることになったものの、その後も、パパニアンとして他の群れに合流するとかいうこともなく、しかも、パパニアンの雌であるうららの猛アタックにもなびかず、りんへの想いを貫いているようだ。


結局、ここまで極端な個体は子を残すことなく本人の代だけで消えていくのが一般的なのかもしれない。同じくパパニアンであるほむらも、レオンであるりんと番ってパパニアンとしての生き方は完全に放棄してる感じだしな。まあ、ほむらりんの方は、今もラブラブではある。こちらは二人とも『子は要らない』ということで意見が一致しているみたいだしな。


が、どんな生き方をしようと本人が幸せなら、俺は口出しするつもりはない。何しろ俺自身、惑星プラネットハンターなんてヤクザな仕事をした挙句、自棄ヤケをおこして夢色星団に飛び込むなんて自殺行為を図ったりもしたわけで。


自分が上手く生きられなかったことで『子供にはそうなってほしくない』と考えてしまいがちなのも地球人の特徴かもしれないが、それで子供に過干渉して追い詰めるなんて事例も数限りなくあったんだから、そこから学ばないととも思うしな。


あらたについては、別れたりんのことを想い続けてうららの求婚も受け入れない状態ではありつつ、だからといって本人は不幸そうにはしてないし、これはこれでアリだと俺は思う。他者の<幸せの価値観>を押し付けて追い詰める必要は、まったく感じない。


価値観の押し付けによる過干渉でも、地球人の社会では無数の軋轢を生み出してきたからな。同じ轍は踏みたくないんだ。


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