新編 元も子もない

まあ、取り敢えず、ドーベルマンMPM四十号機と四十一号機を配したことで、せいともなんとか折り合いをつけて穏当?に<お隣さん>として生きていけるだろうと思う。


もしかすると駿しゅんの群れには被害が出るかもしれないが、そこまではな。さりとて、駿しゅん達も呑気に構えてるわけじゃないから、ちゃんと対処もするだろう。


なお、現在、しんえいのために配したドーベルマンMPMは、現在は四十号機と四十一号機だが、何度も言うようにドーベルマンMPMは基本的に<個性>というものが生じるような仕様にはなっていないので、メンテナンスなどの都合で入れ替えが生じる可能性はある。機体が入れ替わっても対応が変わらないのがドーベルマンMPMの強みだ。


この辺は、アリスやドライツェンとは違う。


ただ、これらロボットについては少々頭の痛い問題が浮き彫りになりつつあるんだが、それについてはまた改めて触れることにしよう。




それはそれとして、同時に派遣してもらった四十二号機については、無事、ばんの観察を始められたようだ。特に何か大きなことがない限りは触れることはないと思うが、早速、ばんが、自分の縄張りに侵入してきた雌のヒト蜘蛛アラクネと衝突してこれを撃破。食ってしまったようだ。


ばんは、<人間そっくりの部分>は女性のそれなんだが彼自身はあくまで<雄>で、せっかくの同族の雌を殺して食ってしまうとか、いやはや、野生というのはシビアだな。


これがもし、繁殖期なら、そのまま交尾ということもあったんだろうが、間が悪かったか。相手の雌も、ヒト蜘蛛アラクネの習性として縄張りの拡大を狙っただけだろうし、こういうものとはいえ、残念だ。


ちなみに、現時点では、ヒト蜘蛛アラクネには<好み>というものはないらしいと推測されている。求愛行動も、しないわけではないらしいがあまりそれは重要ではなく、たまたま出会った相手と交尾するというのが基本のようだ。個体数が限られているので、チャンスは確実にものにするということなんだろう。


この辺りは、同じく密林においては最上位捕食者になるであろうマンティアンとは違っている。めいに迫って相手にされず、結果的にかくに殺されて食われてしまったさくの例でも分かる通り、こちらには<好み>というのがあるようだし。


同じ野生の生き物でも、それぞれ、違うということだ。


なお、ヒト蜘蛛アラクネの<交尾>は、雄がいわゆる<精嚢>と呼ばれる精子が詰まった袋を雌に受け渡すことで行われるので、ほんの一分かそこらで終わってしまう。そして交尾が終われば急いでお互いに離れるんだ。せっかく交尾したのに雄が雌を食っちまったら元も子もないからな。


ただし、その逆は、成立する。雌が雄を食ってしまうというのは。


これについては、カマキリとかが有名だな。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る