新編 都合よくは

新暦〇〇三四年二月五日




そんなこんなで、ドーベルマンMPMの四十号機と四十一号機を、しんえいの護衛のために寄越してもらった。そして、四十二号機をばんを観察するためにつける。


ただし、変に常時こちらで確認してると余計な手出しをしてしまいそうなので、記録だけとって、ばんが亡くなってからそれを確認する形にしようと思う。正直、情が移ってしまってるんだ。彼が向こうのパパニアンやアクシーズやパルディアを襲ったりしたら、邪魔せずにいられない気がする。パパニアンやアクシーズやパルディアを守りたいというのもそうだが、彼にそれをさせたくないっていう気持ちもあるし。後から記録を確認するのなら、手出しのしようもないわけで。


なので、ばんについては、何か大きな変化があれば改めて触れることになるだろう。


四十号機と四十一号機については、ドーベルマンDK-aらと基本的には同じ感じで、集落の周辺の哨戒を担当してもらいつつ、しんえいが狩りに出た時には、護衛をしてもらうということだ。


ちなみに、あらたが食事に出たり、じゅんまどかひなたうららを連れて行くのは、ほまれの群れの縄張りの境界線近くまでだから、こちらはドーベルマンDK-aだけで間に合っている。何しろ、めいかくの縄張りとじょうゆうの縄張りにも囲まれている上に、しょうすいの縄張りとも接し、駿しゅん達の縄張りのど真ん中でもあるわけで、そんなところに入ってくる命知らずはそうそういない。


実際、もう何年も危険らしい危険もなかった。


がく夷嶽いがく牙斬がざんのようなのが出れば話は別でも、そういうのが出たら話の前提そのものが変わってしまう。


なので、現状ではそれについては別口として、日常の防衛体制には組み込まない。


「ドーベルマンMPM四十号機及び四十一号機、所定の位置につきました。運用を開始します」


フライトユニットを装着してコーネリアス号からこちらに来て、エレクシアの指揮の下、任務に就いてくれた四十号機と四十一号機を映し出したタブレットを手に、エレクシアが報告してくれた。牙斬がざんとの一件で義手になった左手は特に問題なく機能してくれている。だから、デザインが違っている以外では意識することもない。


とまあそれはさて置いて、せいが縄張りを持ったことによる防衛体制の再構築は、滞りなく終えられた。


緊張感は持ちつつも、油断はしないようにしつつも、極力、平穏な暮らしは続けたいと思う。




思うんだが、そうそうこちらの都合よくはいってくれないか。さっそく、せいが俺達の集落に接近しつつあったんだ。


やれやれ。


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