ビアンカ編 この世を楽しむ
新暦〇〇三四年三月二日
そして今日、ビアンカ自身が告げたように、再び彼女が
それを目にした
まるで、
<親にかまってもらえて喜んでる子供>
のようだ。
そして、ビアンカの方も喜んでいた。彼女にとっても、
<訳アリで他者に怯え世界に怯え心を閉ざしていた女の子>
に、
<自分の中に湧き上がる激しい衝動を抑えきれず暴力的になってしまう男の子>
か。
自分の子を産み育てる前の予行演習としては、実に濃密な経験だな。しかし、悪くない。悪くないと思う。
何しろ、こんな世界に、
<アラニーズと透明人間の子>
なんていう無茶苦茶な境遇で送り出すんだ。人間(地球人)社会なら、
『何を考えているんだ!?』
と非難を浴びるのは目に見えている。
でもな。俺も、
それは結局、
『なんで勝手に生んだ!? 生んでくれなんて頼んでない!!』
という、子供の怨嗟の声を受け止める覚悟があればこそだと思う。
子供自身には一切の承諾をもらわず、自分達の勝手でこの世に送り出したという厳然たる事実をちゃんと理解し、その上で子供が幸せを感じられるように努力する心構えがあるからこそ、だ。
『なんで勝手に生んだ!? 生んでくれなんて頼んでない!!』と子供に詰め寄られたくらいでショックを受けるような人間じゃ、ここではおそらくまともに生きてもいけないだろう。俺自身、
裕福でない家庭であっても、『自分が勝手にこの世に送り出した』という事実と向き合う覚悟を持っている親であれば、
『自身に与えられた手札の中でいかに工夫してこの世を楽しむか』
ってのを子供に教えることもできると思うよ。
逆に、どれほど裕福な家庭に生まれようとも、『自分が勝手にこの世に送り出した』という事実と向き合う覚悟を持たない親の下では、親の言いなりになることでしか精神の安定は得られないだろうな。
ましてや、
『生んでやった』
とか思ってる親の下じゃな。
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