ビアンカ編 分の悪い賭け
ビアンカが
「……」
池に浮かんでぼんやりとしている
「
と声を掛ける。
が、ルコアが心配してるのはそこじゃないのは、
「はい……」
それでも、ルコアも
たぶん、これまでにも何度か言ったと思うが、フィクションなんかで厳しく接してくる人物相手に心を開いている描写があったりするのは、そもそも根底の部分である程度の信頼関係が成立してるからのはずだ。信頼関係を築ける要素があればこそ、厳しく接してもその厳しさの中に<意味>を見出すことができる。しかしそれは、受け手側の感性に頼った<分の悪い賭け>でしかないんだ。
『<厳しさの向こうにある信頼に足る部分>を察してくれる感性を持っていることに頼った』
な。
受け手側がそれを察してくれなければ、ただの<理不尽な輩>にしかならないんだよ。
そんな<分の悪い賭け>しかできないのが、<大人>というものなのか? 相手にきちんと丁寧に分かるように伝える努力をしないのが、大人なのか?
俺はそうは思わないし、
優しいが甘くはない。甘くはないが理不尽ではない。そういう大人なんだ。『甘えさせる』ことはしても、それは決して『甘やかす』じゃない。『甘やかす』というのは、所詮、
『お菓子でも
という身勝手さの裏返しでしかない。『甘やかし』は、それをする側こそが『甘えてる』んだ。手を抜きたくてな。楽をしたくてな。
でも、
そういう大人であればこそ、ルコアのような大変な事情を抱えた子が頼ることもできる。
「ありがとう、ルコア」
とても穏やかな目で、
「……」
ルコアも、穏やかな表情で頷いてくれる。
こうして二人は、畑作業を続けたのだった。
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