ビアンカ編 砂の上の大砲
しかしその一方で、<攻撃的な気性>をただただ上から抑えつければそれでいいのか? と言えばそうじゃないことも分かってる。そうやって強引に抑え付けようとするのも、要するに、
『他人に厳しく自分に甘い』
ってことだからな。本人の中に湧き上がる衝動については、適宜発散させてやる必要があるそうだ。それを許さずただただ抑えつけると、歪んだ形で爆発することもあるし。
<自身の体の使い方>
を自ら習得してもらう意味もある。そして<力比べ>は、以前にも言ったとおり、
『群れの中での自身の序列を肌で感じ取る』
のも目的だな。
<発散>
<鍛錬>
<身の程を知る>
それを同時にこなしてもらうために、敢えて好きにさせてるんだ。
力尽くで抑え付けるようにすると、
『相手を力で屈服させるのが正しい』
と学び取ってしまう危険性が高いし。
確かに、力尽くで抑え付けるのが一番手っ取り早くて確実なような気はするだろう。俺もそんな気がしてしまうことはある。しかし、それは、
ハートマンやグレイを超えることは
だからビアンカが
ゆえに、
『相手を力で屈服させるのが正しい』
というのを学ばせるわけにはいかないんだ。<性善説>も<性悪説>もただの幻想でしかないことも分かってる。生き物には、本来、善も悪もない。となれば、
『善悪という虚構の概念の上で善性に賭ける』
なんて、濡らした砂を固めただけの土台の上に大砲を設置するような真似はできないんだ。
ちょっとしたはずみで傾いて砲撃が自軍に降り注ぐかもしれないようなのはな。
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