ビアンカ編 生活パターン

ビアンカは、理不尽であり不条理であり不公平であり残酷なこの世というものを受け止めることができている。


もちろん、感情の面では納得もいってないとしても、だからといって辛い現実にブチ切れて誰かに八つ当たりすることが正当化されるとも思っていない。


もっとも、それができるということ自体が、


『自分の存在を認めてもらえているという実感があればこそ』


というのもまた、事実だろうけどな。


アラニーズとして生まれてしまった時、俺やシモーヌやひかりあかりが彼女を受け止め存在することを認めているという実感が彼女を支え、そして今では、ルコアが、未来みらいが、なにより彼女が心から敬愛する久利生くりうが自分を愛してくれているという事実が、彼女を強固に支えているんだ。


だからこそ俺は、ビアンカと久利生くりうが愛し合える環境を守らなければいけないと思ってる。


まあ、俺がそんな気を回さなくても二人はちゃんとやってるけどな。


「少佐。そろそろお昼にしませんか?」


目を覚まして今度はビアンカの体によじ登って「うおーっ! うおーっ!」と声を上げる未来みらいを乗せたまま、ビアンカが久利生くりうに声を掛ける。


「ああ、そうだな」


その姿はまるっきり<夫婦とその子供>だった。


「なら、こっちも昼にするか」


「そうね」


俺がシモーヌに声を掛けると、


「ごはん~っ♡」


「ごはんごはん♡」


傍で遊んでいたまどかひなたがすっとんできた。うららも一緒に近付いてくるものの、遊ぶんじゃないと察すると踵を返して、屋根の上で日向ぼっこをしていたあらたの下へすっ飛んでいき、それに気付いたあらたは屋根の上から大きくジャンプ。密林へと駆け込む。もちろんうららもそれに続いて、密林へと。


二人で食事に出掛けたんだ。お気に入りの果実が近くに生っているからな。


ほむらさいしんえいれいは相変わらずのマイペースぶりで、それぞれ勝手に食事も済ませてる。<同じ群れの仲間>ではありつつ、互いに過度な干渉はしない。それぞれの生活パターンは乱さない。危害を加えるようなことをしない限りは。


それがこの群れの<約束事>だ。


同時に、ビクキアテグ村の約束事でもある。


自分の責任において自分の生活パターンを決めている分には、本人に任せるんだ。


と言っても、ビアンカとあかり久利生くりうについては、一緒に食事をしたりお茶にしたりっていうのが楽しいので基本的には合わせるし、ルコアも、すっかり無理なく一緒にいることができるようになってきた。


決して、生活パターンを合わせることを強制はしない。しないが、


『一緒にいた方が安らげる』


関係を保つ努力はするんだ。


だから未来みらいも、皆と一緒にいるのが楽しいようだ。


ただし、きたるだけは、本当にマイペースだが。


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