ビアンカ編 この世というのはままならんものだ
正直、<生きる>ということ自体が、<過酷な試練>だと俺は思う。
そうだ。
『どんな両親の下に、どんな環境に、どんな自分として生まれてくるのか』
を自分で選べないなどということ自体が、そもそも酷い話じゃないか。ゲームでは、どんなキャラクターを使うか自分で選べたりするものの、実際の人生ではそれは決して有り得ない。
なるほど、いい条件で生まれてこれれば多少の楽もできたとしても、しかしそれすら、ちょっとばかり条件が恵まれるというだけで、その後の人生そのものを保障してくれるものでもないわけで。
<惑星リヴィアターネ>は、ほとんど手を入れる必要もないくらいに地球に似た環境の惑星だったことで、移住を希望する者が殺到。上限十億人の募集枠に対して二十億人分の応募が殺到したそうだ。しかも、十億人のうちの五千万人分は、
『金を積めば買える』
というものだったにも拘らず、募集開始後数分でソールドアウトしたとも。一応、買った枠は他人に譲渡してはいけないという条件はあったものの、それすら無視して秘密裏に枠の売買も行われ、一説によると、最終的には百倍以上の価格にまで高騰したとか。しかも同時に、枠の売買を装った詐欺も蔓延。大変な過熱ぶりだったとも聞く。
なのに、そこまでして果たした<惑星リヴィアターネ>への移住も、後の災禍で、大金をはたいて移住した者も、幸運にも当選して移住した者も、パンデミックが始まる以前に所用で離れていた者達を除いて全員が等しく死んだ。
社会的な<成功者>だろうと凡人だろうと、関係なく、な。
これは、他の災害でも同じだ。無論、金銭的な余裕があれば備えもしやすいだろうが。それでも完璧じゃない。
世界的にも有名なセレブが事故で呆気なく死んだりもする。
そして、すべての人間が結局のところ最後は死ぬ。誰一人、それを免れることはできない。
なまじ、金銭的に余裕があるだけにあれこれ手を尽くして不老不死を手に入れようとする者もいるらしいが、それに成功した者はいない。
自分のクローンや超高性能な人工頭脳を作って、それに自分の記憶と人格を移植してという方法も試されたという話もありつつも、それもやはり成功したという例はない。
クローンについては厳しく取り締まられているし、人工頭脳に自分を移し替えても、それは<人間>とは見做されない。
ただの、
<故人の記憶をコピーされ、疑似的に人格を再現しているAI>
としか扱われないんだ。<人権>も認められず、それを遺産として受け継いだ者の<財物>でしかないんだよ。
とにかく、『この世というのはままならんものだ』ということだけは確実だって話だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます