ビアンカ編 攻撃的になる必要がない

もし、


『ずっと大人に虐げられ続ける環境で、自分が大人になった時には、子供の頃にされたことを次の子供に対してやらずにいられない』


と言うのなら、大人にされてきたことを自分が大人になった時にはやらずにいられないと言うのなら、それは翻って、


『自分が子供の頃にしてもらったことを大人になってから自分もやれる』


ってことじゃないのか? 


だとしたら、子供の頃に虐げられたりしなければ大人になってからも他人を虐げずにいられるんじゃないのか?


少なくとも、ひかりあかり、そして、まどかひなたも、他人に対して悪意を持って理不尽なことはしないぞ?


それなりの年齢になってから俺達の群れに加わったパパニアンのじゅんでさえ、理不尽な振る舞いはしない。それが元々の彼の性格によるものだとしても、


『ここでは理不尽に虐げられることがないから、攻撃的になる必要がない』


というのも間違いなくあるはずなんだ。


じゅん自身が言ってくれてる。


「ひあり、やさしい。ぼくも、やさしいきもち、なる」


ってな。


攻撃的に接してこられたら、自分を守るために攻撃的にならざるを得ないというのは、確かにある。それは俺も分かる。


こちらが信頼を勝ち得ていない時点では、不信感から攻撃的になることがあるのも分かる。しかし、そういう形で攻撃的に振る舞われたとしてもそれに対処できる体制がこちらには整ってる。たとえマンティアンが暴れても、エレクシアやイレーネやハートマンやグレイがいれば、容易く凌ぐことができる。


なにもこちらまで攻撃的になる必要はない。


未来みらいに対しても、それだけのことなんだ。


彼を虐げなければならない理由はこちらにはない。彼が暴れたりしたところで、たぶん、ルコアでさえ未来みらいよりも強い。久利生くりうも、単純な膂力では勝てなくても、<技>を知らない今の未来みらいじゃ、達人レベルでそれを分かっている久利生くりうには手も足も出ないだろう。


それが分かっているんだから、別に、未来みらいを力尽くで屈服させて従わせる必要もないんだよ。理不尽な振る舞いをする必要がないんだ。


だったら、<理不尽な扱い>を受けてこなかった未来みらいが、大きくなってから、何を反発しなきゃならないんだ?


人間としてまっとうな扱いをしてもらってきたのに?


俺達がしようとしてるのは、そういうことなんだよ。


『自分は散々虐げられてきたのに、せっかく成長して力もつけても他人を虐げちゃいけないとか、納得できない!』


なんて考えずに済むようにしてるだけなんだ。


その中で、ビアンカが、未来みらいの挑戦を受け止めてくれてる。それが未来みらいにとってどれほどの安心感を与えるか、傍で見てると分かるよ。


まあ、実際にはモニカやテレジアのカメラ越しではあるが。


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