モニカとハートマン編 これからも
俺は別にここに<ディストピア>を作るつもりはない。単純に、『生まれてきて良かった』と思えるような世界を作りたいだけだ。
それが実際には夢物語に過ぎなくても、努力はしたい。自分じゃロクに努力もしないクセに、
『こんな世界はクソだ!』
とか難癖を付けるような人間ではいたくないしな。
それに、モニカもハートマンも、頑張ってくれてるよ。
ベッドの上で体を起こすことができるようになったルコアに、
「お食事をお持ちしました」
と、モニカが穏やかに声を掛けてくれる。ルコアも、そんなモニカにホッとしているのが分かる。これでいいんだ。こういう関係でいいんだよ。
そして、ルコアやビアンカを守るために、二人の安寧を脅かす存在へのカウンターとして、<監視>も行ってくれているだけだ。
だからハートマンも、黙々とビクキアテグ村の周囲の哨戒を行う。
自分が
ルコアとビアンカと、その二人を守るために自分の役目を果たそうとするモニカとハートマン。
これこそが、<答>なんだと思う。
「ご苦労様、ハートマン」
そんなハートマンに、
「ありがとうございます。
エレクシアのように、
『いえ、これが私の役目ですから』
的な冷淡なそれではない返事をするハートマンに、
「私の代わりにみんなを守ってくれてありがとう」
肝心な時に村にいなかった自分を悔やみつつ、
するとハートマンも、
「ですが、私の力不足でルコア様が怪我を……これについては大いに反省しなければと思っています。私はデータを蓄積し、より高度な戦術をこなせるようにならなければと考えるのです」
本当に人間のような返答を。これに対しては、
「真面目だなあ、ハートマンは。でも、ま、そこがハートマンらしいけどさ」
笑顔を見せた。
ロボットはあくまで<道具>だ。だが、エレクシアにもいわれたとおり、ロボットのことを『単なる道具』と口にしながらも、完全には割り切れないのも人間というものだと思う。
そういう関係性も含め、俺はこれからもモニカやハートマンの<成長>も見守っていきたいと思うんだ。
こうして一つの<試練>を乗り越えて、ビクキアテグ村に平穏が戻った。
自身の軽率な行動でルコアが傷付くことになった
経験は踏まえつつ、それを活かしてより的確な行動をできるようになる。
これができれば、今回のことも<いい経験>にしていけるさ。
まあ、活かせなければ、<いい経験>どころかただの<悪夢>に過ぎないが。
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