モニカとハートマン編 運命共同体

正直、ルコアをコーネリアス号に避難させた方がいいんじゃないかと素人である俺なんかは思ってしまう。


しかし、久利生くりうは言うんだ。


「確かに、その方が安全なような印象はあると思う。けれど、敵の力がはっきりしない上に人間の気配を察して襲ってくるとなれば、コーネリアス号が必ずしも安全とは限らない。しかも、コーネリアス号に直接向かう可能性も否定できないしね。それよりは僕達の手の届くところにいてくれた方が対処もしやすい」


「なるほど…」


実際に軍人だった彼にそう言われると、素人でしかない俺は納得するしかない。けれど久利生くりうは続けた。


「さりとて、僕のこの判断が正しかったかどうかも、状況を終えてみないと分からない。コーネリアス号に避難させるべきだったと言われるような結果に終わる可能性も、もちろんある。それがどちらにせよ、僕は僕にできる全力を尽くすだけだ」


確かに、俺もずっとそういう気持ちでやってきた。自分の判断が正しかったかどうかなんて、所詮は結果論に過ぎない。いい結果が出れば<正解>だし、よくない結果が出れば<間違い>だったわけで。


だが、それがどちらにせよ、俺も久利生くりうも、責任を負う立場であることには変わりない。大事なのは、その覚悟があるかどうかだ。


よくない結果が出れば間違いなく<後悔>するだろう。『ああすればよかった』『こうすればよかった』と懊悩することは避けられない。しかし、<何一つ後悔のない人生>を送ることができる人間なんて、まずいない。


なら、少しでも納得できる方を選ぶべきか。


ルコアはもう、ビクキアテグ村の住人だ。それはつまり、<運命共同体>であるとも言えるわけで。


でも、もちろん、ルコアにもしものことなんてあってほしくない。だったら、全力で守るだけだな。そのためにもエレクシアまで派遣したんだ。


そうだ。エレクシアが到着すれば、それこそビクキアテグ村こそが一番安全な場所ということになるだろう。うん、そういうことだ。


しかし、ダミー集落N006のドーベルマンMPMが機能停止するまでに送ってきたデータを詳細に解析するごとに、<白いルプシアン>の異様さが判明してくる。


「電磁パルスによる攻撃が行われた形跡があります」


エレクシアの代わりに説明してくれたイレーネの言葉に、俺は、


「バカな!?」


と声を上げてしまった。だが、映像解析でも、


みずちがくのそれと同様のものと思しき鱗も確認できます」


とのこと。


「……」


言葉を失う俺に突きつけられる現実。


タブレットに映し出された画像には、確かに、腕の一部が毛の代わりに鱗らしいもので覆われているのが写っていたのだった。


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