モニカとハートマン編 負けないために備えてる

『エレクシア! 応援に向かえ!』


俺の命令に、エレクシアは一瞬で準備を終えて、ミレニアムファルコン号を背負い、あかりと同じく僅か数歩で離陸、飛び立った。


かつては、俺を守るために存在してるがゆえに、この場を離れるにはいろいろ制限もあったものの、今はイレーネもいるし、ドーベルマンDK-aらもいるし、めいしょうすい駿しゅん達の群れの縄張りに囲まれたここは、おそらく、この台地の上では最も安全な場所の一つだろう。だからエレクシアのフットワークも軽くなる。


もっとも、さすがにあかりよりは二十キロ以上重いエレクシアを乗せたミレニアムファルコン号の動きについては、重さを感じさせるものだったけどな。


とは言え、性能的には何も問題ない。あかりがのんびり飛んでも二時間程度だから、急げば二時間と掛からず村に辿り着けるはずだ。


問題は、その二時間足らずの間を無事にやり過ごせるかだが……


機能停止した、ダミー集落N006を受け持っていたドーベルマンMPMが記録した映像がタブレットに映し出される。しかし、画面の奥から一瞬で迫った白いルプシアンに向けて自動小銃を放ったドーベルマンMPMが成す術なく翻弄されるのが、乱れた映像からも見て取れた。


確かに、ドライツェンよりは性能も劣るとはいえ、普通のルプシアン相手なら負けることはないはずのドーベルマンMPMがこれというのは、正直、戦慄を覚える。手強いなんてものじゃないぞ。


おそらく、アリゼとドラゼが二体がかりでも倒しきれなかった龍然りゅうぜんが相手でもこの感じだろう。と言うことは、やはり、少なくとも龍然りゅうぜん以上の強敵ということだな。


さりとて、コーネリアス号に配備されていたこともあり、データを得るごとに細かく改良を加えてきた今のハートマンなら、龍然りゅうぜん相手でもいい勝負をする、はず。


だとすれば、ハートマンと同等の改良を加えられたグレイとドーベルマンMPM十二機がいれば、恐れるに足りず……うん、そのはずなんだ。


なのに、なんだ…? この胸騒ぎは……?


俺が感じてるそれを、きたるも感じているのか、また未来みらいを抱いて池に入っていた。いや、きたるの場合は、久利生くりうやビアンカの緊張を察してのことかもしれないが。


いずれにせよ、ビクキアテグ村そのものが緊迫した空気に包まれているのは事実。


ビアンカと同じく、可能な限りの装備を身に付けた久利生くりうも、軍人らしく厳しい表情をしている。普段の穏やかな優男ぶりはどこへやら。


こうなるとルコアも不安そうに、ビアンカを見る。


そんな彼女に、ビアンカは、


「大丈夫だよ。私達は負けない。負けないために備えてるんだ。こういうものだよ」


ふっと穏やかな表情を向けてくれた。そしてモニカは、そんなルコアにしっかりと寄り添ってくれていたのだった。


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