モニカとハートマン編 いらっしゃい

新暦〇〇三三年九月十八日。




さて、今日から二泊三日。ルコアとビアンカはビクキアテグ村で連泊する。


「はい、いらっしゃい。ルコア。ゆっくりしてってね」


ビアンカ専用ローバーに、二人してぎゅっと詰まって乗って、ルコアとビアンカがやってきたのを、あかりが満面の笑顔で出迎えてくれる。


「よろしくお願いします……」


そんなあかりに、ルコアもおどおどしながらでも笑顔になってくれた。


「よろしくお願いするのは僕達の方だよ。君のような素敵なレディをこうして迎えられるのは光栄なことだからね」


久利生くりうの方は、ナチュラルに女性を口説き落とす甘いセリフとイケメンスマイルの贅沢セットで必殺攻撃だ。完全に身に沁みついているのが分かる自然さがまたスーパーイケメンパワーだな。普通の女性なら余裕で勘違いしてしまうところだろう。


が、相手はルコア。彼女の父親も、系統は違うがイケメンだそうで、しかも父親のことが好きだったそうだから、さすがの久利生くりうのイケメンパワーも効果は半減というところか。


ちなみに、『父親のことが好き』というのはメイガスからの情報だ。もちろんこの時点ではあたるの嫁がメイガスだとは判明してなかったから彼女からの証言が得られてたわけじゃないので、『今から思えば』ということだな。加えて、厳密にはルコアじゃなくて<クロト>の情報ではあるものの、どうやらルコアとクロトはよく似てるらしいし。


が、その一方で、きたるは明らかにルコアのことを警戒していた。これまでにも何度か姿は見掛けているものの、きたるにとっては俺達人間(地球人)の都合なんて知ったこっちゃないわけで、サーペンティアンという明らかに異様な存在であるルコアに対しては、強い警戒を見せていたということだ。


今は未来みらいがいるからな。余計だよ。




ところで、ルコアの遺伝子情報を詳細に調べていて分かったことだが、彼女の体には、特殊な<能力>が備わっているのが判明した。


これまでにも判明していた、


<タングステン並みの高度を持つ鱗を生じさせる能力>


とも別のものだ。


それは、緊急の事態に瀕した際に生き延びる確率を上げるために備わっているものらしい。


というのも、重要な器官が集中している<上半身>を確実に守るために、非常時には腰から下がある種の<休眠状態>になり、生命活動のレベルを極限まで下げることで<生きるためのリソース>を上半身に集中させることができるらしいというのが、解析された遺伝子情報を基にしたシミュレーションで判明したんだ。


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