当編 メイガス・ドルセント

<何人ものメイガス・ドルセント>


こう考えると、当然、シモーヌやビアンカや久利生くりうだって、他にも何人も生まれている可能性はある。


と言うか、先にも述べたとおり、シモーヌの外見を持った奴なら<グンタイ竜グンタイの女王>が、クラレスの外見を持った奴なら<みずち>がいたわけで、実は、この惑星全体で考えればまったく珍しいことでもないんだろうな。


なにしろ、たった三十六人だからな。あの不定形生物にデータとして取り込まれた人間は。


が、それが同じ場所に集まるというのは大変な偶然なんだろう。


いずれにせよ、<あたるの嫁(仮)>改め<メイガス>とも今後関わっていくことになるわけだ。


当然、ルコアとのこともある。


しかし、完全に姿が変わってしまった上に、父親とは別の男性(と言っていいのかどうかは議論の余地がありそうだが)の子供を生んだ、


<母親の記憶や人格を受け継いでいるだけの他人>


となると、果たしてどうするのが<正解>なのか、まったく分からんな。


物語的には<感動の再開>を果たした上に、


『母と娘の絆を結び直す』


的な展開がベタでありつつも好まれるんだろうが、果たしてそんな上手くいくだろうか……?


ここでも、


『今の自分と折り合いを付けられること』


が重要になるのかもしれない。


ここまでクロコディアとしての生き方に馴染み、シモーヌやビアンカや久利生くりうにさえ<メイガス・ドルセント>だと悟らせなかった上に、あたるの子まで産んでしまったメイガスは、もうすでに今の自分を受け入れてしまっているんだろう。


しかし、ルコアの方はまだまだ先は長そうだ。


安易に会わせると、さらにショックを受けてしまいそうな気もする。


どうしたものか……


などというのは後から考えればいいか。今はとにかく、赤ん坊の保護が優先だ。


だからエレクシアも、


「呼吸が確保されたことで状態は安定していると思われます。念の為、さらに詳しく調べますが、メイガスも来ますか?」


彼女に問い掛ける。


「本当は、あんまり関わりたくなかったんだけどね。でも、この子がお世話になるなら、挨拶くらいはしなきゃとは思うし、案内してもらえたらいくよ」


と、割とあっさりした様子だった。今の自分を受け入れたからこそ、もう人間としての生き方とは決別する覚悟を決めていたのかもしれない。ただ、子供についてはそうもいかなかったんだろうな。


「分かった。赤ん坊については先に保護するということで、しち号機と拾弐じゅうに号機を迎えに寄越す」


俺はエレクシアに告げた。


それをエレクシアが、


「赤ん坊については私が先に連れ帰ります。迎えのロボットを手配しましたので、後からお越しください」


とメイガスに告げる。


「分かった。そっちも慣れたものみたいだし、それでお願い」


とのことだったので、早速、エレクシアは一足先にこちらに戻り、ドーベルマンDK-aしち号機と拾弐じゅうに号機を向かわせたのだった。


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