ルコア編 服

サーペンティアンの少女は、<ルコア>は、風呂から上がって<応接室のような隔離室>に戻って、髪を梳いてもらっていた。


一方で、水分補給もそうだが、食事は大丈夫なのかと思ったものの、食欲がないそうだ。さすがに状況が状況だからそれどころじゃないというのもあるのかもしれない。


ただ、その分、栄養補給用に調整したドリンクについては飲んでくれているそうなので、そちらだけで当面は何とかなるだろう。加えて、ここまで固形物を摂ってきてないのならいきなりしっかりした食事というのは負担も大きいだろうしな。


栄養補給用のドリンクは、<食べ応え>という意味ではまったくもって物足りないものの、必要最低限の栄養については摂取できるように調整されている。コーネリアス号で使われていたのを参考にして再現したものだ。この惑星で採取された材料も合せてな。


味は、割と美味いぞ。ちゃんとその辺りも考えられている。とは言え、<好み>は人それぞれなので心配もしたが、ルコアは気に入ってくれたようだ。


「どう、落ち着いた?」


ビアンカが穏やかに話し掛けると、


「はい……ありがとう、ございます……」


丁寧な口調で返してくれた。風呂に入っている間も、最初は口数も少なかったものの、ビアンカが丁寧に対応してくれるので徐々に慣れていったらしいな。


しかも、風呂で、ビアンカ自身も透明な体も持ってると明かされて、半人半獣の姿と合わせて本当に自分と同じだと知ったというのもあるのかもしれない。


その上で、


「取り敢えず、服で隠せるところは服で隠して、顔や腕については私も使ってるこのファンデーションを塗れば、透明なのについてはかなりマシになると思う。まあ、見ての通り目だけは今のところ何ともならないけど、これは、私以外にも二人、透明な人がいるからね。だから大丈夫。


錬是れんぜも言ってた通り、ここは、私達みたいな<人間>が暮らす惑星なんだ。だから誰もあなたを奇異な目で見ない。それは保証する」


と、グレイに、コーネリアス号にストックされていたファンデーションを届けてもらって、自分の腕に塗りながら説明したそうだ。


それを受けてルコアも、ファンデーションをつけることを承諾した。


なお、この時、コーネリアス号の工作室では、モニカ(アリス初号機)が、ルコアのために<服>を作っていた。そもそもそれ用に制作した<ハウスキーパーロボット>だからな。まったく無駄なく人間にはできない動きで見る見る服を作っていく。


上は、取り敢えずひかりあかりも使ってたタイプの無地のTシャツとスポーツブラをこのまま使ってもらうとしても、下は、今はただのスカートを穿いてもらっているもののアンダーウェアが付けられないので、そのままスカートでというわけにもいかず、上下共にゴムで締める形を考えていたのだった。


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