來編 判断材料

久利生くりうが俺の人間性について判断する材料として、エレクシア達メイトギアの様子を参考にしたのは、実に合理的だと思う。


というのも、何度も言うようにメイトギアは、人間を傷付けようとする者の味方は決してしないんだ。


今のシモーヌやビアンカは、メイトギアにとっては厳密には<人間>ではないものの、だからといって極めて人間に近い形質を持ちメンタリティも人間に準じている彼女達が、人間である俺に対して敵対しない限りは、その存在を蔑ろにすることもない。


人間以外の生き物も、人間の身体生命に危害を加えない範囲ではちゃんと守ろうとするんだ。


つまり、シモーヌもビアンカも、俺と敵対する必要性を感じておらず、かつ、厳密には人間ではない彼女達に対してメイトギア達が人間と同じように接するということは、俺がそうするように望んでいることの何よりの証拠になると。


要するに、俺がどれだけシモーヌとビアンカを大切にしようとしてるかは、メイトギア達を見れば一目瞭然ということだ。


メイトギアをはじめとしたロボットは、嘘が吐けないからな。


これは、人間社会でも割と良く使われる判定法である。手っ取り早く相手の人間性を見るには、その人間が連れているメイトギアに注目すればいいという形で。


他人を蔑ろにしようとするタイプの人間に仕えているメイトギアは、客よりも主人に視線を向けてることが多いんだ。主人が客を傷付けようとすればそのフォローを行うために、常に主人を注視してるということだな。


面白い話だよ。


実際、客を迎えている時に些細なことで激昂して物を投げ付けようとした主人の前に立ちはだかるというのも、そんなに珍しいことじゃなかったりする。


だから相手の人間性とかを見極める必要がある者にとっては、メイトギアに注目するというのは普通のことなんだ。


まあそれが二千年以上前からすでに行われてたことだっていうのはちょっと驚きだったけどな。


さりとて、メイトギアの機能そのものはその頃には完成されてたわけだから、当然といえば当然か。


ってことは、今回も俺はエレクシアに助けてもらったみたいなものだな。


まったく、頭が上がらないよ。


もっとも、エレクシア自身は、そんなこと気にもしないでいつもどおり俺の隣に控えてるだけだが。


まあとにかく、これで久利生くりうも俺達の仲間になってくれたと考えていいだろう。










新暦〇〇三十二年五月六日。




で、今日は、あかり、ビアンカ、イレーネ、久利生くりうの四人で、コーネリアス号に向かうことになった。


ビアンカとイレーネは当然のこととして、


久利生くりうが行くなら私も行くじゃ~ん♡」


あかりもそんなことを言い出したんだ。


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