來編 変化の仕方

ああ、そうそう、浮気とか不倫とかの話で、俺は、


『自分はどんな理由があっても浮気も不倫もしない! だからその可能性を考える必要もない!』


みたいなことを言う人間が信用できないんだが、それってつまり、


『外国が侵略してくることなんてない! だからそのための備えなんか要らない!』


とか言ってる人間に似てるからだろうなって気はしてる。


どんなことであっても<可能性>ってのは必ずあって、それに対する備えや想定は必要だと思ってるんだよな。


まあその一方で、あんまり細かすぎる想定をしてもさすがに対処しきれないから、限度ってものもあるとは思いつつ。


ただ、それと同時に、


『これ以上は細かすぎて想定するだけ無駄』


という部分の線引きが人によって違うだろうなっていうのも分かってるつもりだ。『俺は気にならないが気にする人間もいる』っていうのもあって当然だと思ってる。


例の<不定形生物>に対する危険度の想定にしたって、


『俺の考えこそが正しくてそれ以外は馬鹿の考えること』


みたいなことを思ってるわけじゃないんだ。


なので今後、その辺りで久利生くりうと意見が食い違ったりするかもしれないなあ、とは、思ったりしないこともない。




なんてことを考えながらも、コーネリアス号へと向かうあかり、ビアンカ、イレーネ、久利生くりうを見送る。


で、


「例の不定形生物については、俺達はこれまで、あれに直接という形では、一度しか襲われたことがない。それも、あれが追いかけていたものが俺達のローバーに取り付いたことでついでに襲われたというのが実感だ。


だからそんなに恐れる必要はないと思ってるが、同時に、万が一の事態は常に想定するようにもしている。


早期警戒網を充実して、接近そのものを避けるようにしてるんだ。少しでもローバーに近付くような様子を見せただけでも、大きく迂回して接近させないようには心掛けてる。


もしかしたら『気にしすぎだ』と言われるかもしれないものの、これが今の俺達のやり方なんで、その辺りは承知しておいて欲しい」


と、久利生くりうに告げた。


すると、彼は、


「ああ、君達から提供されたあれについてのデータも見せてもらったが、用心に越したことはないと私も思っている。


基本的には君達の基準に従おう」


と言ってくれた。その言い方は、かなりフレンドリーなものになった気がする。


彼としても仲間になったと認めてくれたということかな。


ただ、その変化の仕方が、ちょっと事務的と言うか機械的と言うかっていう印象もないわけじゃないけどな。


なんというか、状況を数値化して、


『この数値に達したらこういう接し方を』


ってな感じのような……


ま、俺が気にしすぎてるだけかもしれないけどな。


俺も、あんまり人間関係は得意な方じゃないから。


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