來編 表情
ビアンカと
「やあやあ、初めまして。私はそこにいる
そう言って
その様子に
けれど次の瞬間には、
「初めまして。お世話になります。
穏やかな笑みを浮かべつつ右手を差し出し、ガシっと握手を交わす。
それから、
「イレーネ、君も無事だったのか。良かった」
静かに頭を下げるイレーネを見ながら、安心したように微笑んだ。
顔が透明だから慣れない人間には表情が掴みにくいかもしれないが、シモーヌやビアンカと顔を合わせていたからか俺にはけっこう分かってしまう。
イレーネを見た
まあ、メイトギアといえど感情まで再現されて人間のように振舞っていた<仲間>である彼女らと再会できてホッとするのも当然だろうけどな。
でも、その一方で……
ビアンカはローバーから降りてこなかった。決心がつかないんだろうなっていうのはすぐに分かった。今の自分の姿を好きな人に見せるとか、彼女にとっては拷問に等しいだろうというのは、俺にも察せられる。
ローバーのフロントウインドウ越しに、泣きそうな顔で彼女はこちらを見ていた。
それだけなら、ファンデーションで化粧をしているから、あの独特な<目>以外は普通の人間のようにも見える。
そんなビアンカに
「大丈夫だよ、ビアンカ。それとも、ビアンカの好きな人は、私のお父さんよりも器の小さな男だっての?」
彼女を受け止めようとでもするかのように両手を大きく広げて言った。
その言葉に、ビアンカの表情がハッとなるのが分かった。その上で、
「ビアンカ。君も私も軍人だ。戦場ではいろんなことが起こる。私達はそれを乗り越えてきたはずだ」
正直、
『好きな人に今の姿を見せるのが辛い』
という<女心>に対してその言い方はどうなのか?と思わないでもなかったが、それでもビアンカは意を決したように頷いて、ローバーのキャノピーを開けた。
まるで羽を広げるようにボディの上部が跳ね上がり、続いて、実は透明だが表面を覆う細かい毛が光を乱反射して白っぽく見える太くて長い<アラニーズの脚>が地面に下ろされる。そして、
「……!」
さすがの
何しろ、ローバーから降りてきたのは、人間が巨大なクモに抱えられたかのような姿をした生物だったのだから。
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