來編 人間のコピー
エレクシアが一緒にいるから獣の襲撃とかは心配ない。彼女は獣が嫌う周波数の音を出してなるべく近付けないようにしてくれてるし、それでも近付いてくるような鈍感なのがいてもしっかり対処してくれるからな。
それでも、やはり外で呑気におしゃべりをしてるというのもあれなので、
この辺りは、エレクシア達ロボットが羨ましいところでもある。たとえリンクはできなくても、人間に比べれば圧倒的に短い時間で確実な情報のすりあわせができるし。
が、できないことを望んでも仕方ない。ここは素直に話し合おう。
「正直、情報は、膨大かつ多岐にわたるので、まずあなたがどこまで覚えているのかというのを確認したい」
俺の言葉に、
「なるほど。私が知っていることを説明するのは時間の無駄ですしね」
なので、
「あなたが、さっきの、私達が
シモーヌが端的に問い掛けた。
すると彼は、その問い掛けに対し、
「そうだね。まるで霧がかかったかのように不鮮明な部分はあるが、はっきりと思い出せるのは、正体不明の、不定形な生物と思しき何者かに襲撃を受けたところまで、ということだ。
これでいいだろうか?」
普通の人間であればトラウマものの記憶さえそうやって冷静に語る彼に、俺は改めて舌を巻く。
感情を抑えきれなくなっていたシモーヌやビアンカの方が本来なら普通なんだろうにな。
だが、そういう、気持ちが落ち着くまでの時間を省けるというのは、正直、助かる。
しかし、やはり不定形生物内での記憶についてはすぐには思い出せない感じだろうか。シモーヌやビアンカもそうだったし。
まあ、彼女達と同じということならそれも何かの拍子に思い出すんだろう。
だから俺の方も、回りくどい説明は避け、単刀直入にいく。
「まず、現在は、細かい誤差については計算していられないので『おそらく』という注釈付きながら、銀河歴で言うと三二七二年。あなたが例の生物の襲撃を受けてからは二千二百年以上の時間が過ぎています」
そんな俺の言葉にも、彼は取り乱すことがなかった。
「…なるほど。この透明な体とも合わせて考えると、やはり私は本来の<
まったく、よくそんなあっさりと認められるものだと思うよ。
ただ、彼がそれを認められる理由も実はあるらしい。
彼やシモーヌやビアンカのオリジナルが生きていた銀河暦千年頃には、あまり公にはされていないものの、人間の記憶や人格といったものを人工頭脳にコピーし再現するという試みが行われていたそうなんだ。
それもあって、
『人間をコピーする』
という概念が必ずしも遠いものでもなかったんだと。
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