來編 人間と人間以外
『人間をコピーする』
というのは、現在では、原則、禁止されている行為だ。
それを認めると、人間と、人間以外のものという境界が曖昧になるということで。
クローンが認められていないのも結局はそれだな。
人間の社会はAIやロボットによって支えられている。そして、AIやロボットは、人間にのみ尽くすように作られている。
人間以外の存在については、
『人間を蔑ろにしない範囲内でのみ守る』
ことが徹底されているんだ。
だから<AIの反乱><ロボットの反乱>が予防されているという一面もあるらしい。
が、その結論に至るまでには、当然のように様々なことが試みられた。
メイトギアに感情を再現しようとしたのもその一つなんだろう。
まあ、結果としてそれは失敗に終わったらしいけどな。
メイフェアが、シモーヌの姿を再現した<
人間にも、人間以外のものにも、『平等に』いい顔をしようとしてどっちつかずの優柔不断になってしまったら大きな混乱が生じるということだろうなと俺も思う。
そして、クローンを作ったり人間をコピーするというのは、
『どこまでが<人間>で、どこからが<人間以外>なのか?』
という前提を揺るがす暴挙になる。
とは言え、いつの時代もそういう<ルール>を破る輩はいて、俺が住んでいた
で、
『クローンは人間とは認めない』
という大前提はありつつも、だからって現に生み出されてしまったクローン自身には何の罪もない。望んでクローンとして生まれてきたわけじゃないしな。
自分のクローンを作ろうとした奴がいた場合は、オリジナルはもちろん罪を問われる。
その一方、クローンには記憶や人格まではそのままでは再現されないことも分かっている。データとして記憶や人格を保存したものを<インストール>という形で人為的に再現する必要があるそうだ。
となれば、『される側に責任を問う』のは、なるほど非合理に過ぎる。
そんなこんなで、保護されたクローンは、数年に及ぶ、
<人間としての教育>
を受け、徹底した観察の後に、ようやく新生児と同じく<出生届け>が受け付けられ、人間として生きることが許されるんだと。
公式な記録では、これまで保護されたクローンはすべて人間として認められ、人間として生きているそうだ。
<公式な記録>では、な。
都市伝説的な噂としては、オリジナルの記憶や人格のインストールがなされ、オリジナルと同じくクローンを作ったりということに抵抗のないのになってしまうと、<保護という名の拘束>が続けられ、事実上の終身刑に近い扱いを受けるという話もあったんだよな。
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