閑話休題 「灯 FLY HIGH」後編
<ミレニアムファルコン号>と対面した
コーネリアス号のAIからの説明をイレーネが
普段はいい加減そうにも見える
だからミレニアムファルコン号を<装着>してる時も、彼女の脳は機体のバランスなどを自分の中に落とし込んでいってるはずだった。その証拠にわずかに体を傾けたり揺らしたり捻ったり、ヨーイングやピッチングやローリングのそれぞれのモーメントを自分の体に染み込ませようとしてるのが分かる。
知識としてエレクシアから渡されたものを、感覚として掴もうとしてるのかもしれない。機体そのものを自分の体として。
それから機体を背負ったまま数歩、走ってみる。その際に機体がどう揺れるのかも確かめているようだ。
で、
「うん、なんとなく分かった。いけそう」
と声を上げる。
「最初のうちは機体の制御はミレニアムファルコン号自体がしてくれます。
イレーネはコーネリアス号からのアドバイスとしてそう伝える。
「ほ~い」
「タキシング」
一声発した。するとミレニアムファルコン号が機体上部に設置されたプロペラを始動する。
「理屈はもう十分、後は実践あるのみ!」
言うなり地面を蹴り、前屈みで走り出す。さすがアクシーズの血を引く
そしてそのまま体を水平にして宙を滑り、ゆっくりと上昇していく。
「お~っ! 上手い!」
その様子を見ていたビアンカが声を上げる。
そうだ。今、
が、ぐるりと旋回したと思ったら、すぐに降りてきた。何かトラブルか?
「どうした?」
と訊く俺に、
「あ、いや、飛ぶのはもう分かったからいいんだけど、離陸がちょっと納得いかなかったんだよね」
だと。
「へ…?」
「ミレニアムファルコン号、出力最大!」
機体が出す推力と自身の脚力とを合わせればそれができることを、さっきの離陸でもう察したらしい。まったく、なんてセンスだよ。空を飛ぶことについてのそれはやっぱり元々備わってるってことなんだろうか。
すると、機体に備えられたカメラに捉えられた
「飛んでる……私、飛んでるんだね……」
しみじみと彼女は言う。
高度はもうすでに数十メートルに達していた。
アクシーズの血を受け継ぎながらも翼を持たずに生まれてきたことで空を掴むことができなかったこの子が、今、どんなアクシーズよりも、高く、長く、飛んでいる。
その事実に、俺も胸が熱くなる。
そして
「お父さん……世界って広いね……それに……
それに、すごく綺麗だ……」
そうだ。さらに上昇して高度百メートルに届こうとしてる彼女の眼前には、どこまでも世界が広がってるはずだった。それを目の当たりにした
「ああ…そうだ……世界は広いぞ……そして綺麗なんだ……」
噛み締めるように俺は返す。
なのに、この子は言うんだ。
「お父さん。私をこの世に送り出してくれてありがとう……愛してる……」
って……
「バカヤロウ。親を泣かせるんじゃないよ。この不良娘が……」
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