翔編 謎は謎のままで
正直、不定形生物の謎については、解けてもいいし解けなくても、俺個人としてはどっちでも構わない。興味はあるものの、逆に、
『謎は謎のままでそっとしておいた方がロマンってものかな~』
とか思ったりもするんだ。
あれの危険度も、まあ、
油断してるところを襲われると厄介でも、当の不定形生物自身、<人間のサンプル>はもう間に合ってるみたいだからな。コーネリアス号の乗員達の分だけで。
あれが生息してる河を何度も行き来したのに、最初の襲撃以来、一度も襲われていないどころか、精々、遠くにいるのを見かけるくらいなんだ。まあそれについては、あの不定形生物らしき反応が捉えられると大きく迂回して距離を取るようにしてるというのもあるだろうが。それでいて、河の周囲の動物は、時々、襲われているようだ。
つまり、あくまでエネルギー補給のために捕獲はするものの、おそらくデータとしては欲していないということだろうな。
加えて、あれをひどく恐れているのは、人間由来の、いや、厳密に言うなら、
<コーネリアス号の乗員由来の生物>
だけだ。それ以外の生物の場合、やはり危険だとは感じているようだが、それはどこまで行っても<天敵の一つ>として恐れているだけなのかもしれない。
だからもしかすると、本能レベルで不定形生物に対する恐怖が根付いているのかもな。コーネリアス号の乗員由来の生物には。
しかし、当のシモーヌやビアンカは、警戒はしているものの、それなりに思うところもあるものの、<恐怖>という意味じゃ、俺と大して違わないようだ。ある意味、科学的にあれを認識してるからだろうか。
この辺りも、こういう言い方すると語弊があるかもだが、『面白い』。
まあいずれにせよ、
「悪いな。こんな面倒臭いボスで」
言ってしまえば俺の気分転換に付き合せた形になったシモーヌとビアンカに詫びを入れる。
するとシモーヌは、
「何言ってるの。もうどれだけの付き合いだと思ってるのよ。面倒臭いだけならとっくに見限ってるって」
と
「辛いことと向き合うためにはこうやって気分を変えることも必要だっていうのは私も分かります。
それに
と言ってくれた。
ああ…いい仲間に恵まれたな……
改めて実感する。
とは言え、今後も、彼女達のようにまたコーネリアス号の乗員達が再現されることもあるだろう。もしかしたら俺が生きている間にはそういう巡り合わせはもうないかもしれないが、俺達の子孫はそうやって出逢ったりするかもしれない。
その時には<先輩>として丁重に扱うように、このことも伝えておかなきゃいけないな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます