翔編 私がいるからって

新暦〇〇三十一年一月八日。




改めてすい清良せいらの様子を確認する。


と、やっぱりしょうたいりょう鈴良れいらとは違ってて、実にこう、静かな様子だな。


だからと言って険悪とか言うのとも違う気がする。


まあ、二人には二人のペースがあるだろうから、俺がとやかく言うことじゃないだろう。子供ができればそれでいいし、できなければそれもそれでいい。二人に任せるよ。


で、妊娠したらしいしょうたいを寄せ付けず、仕方なくたいはまた自分用に、しょうの姿は見えながらも彼女が威嚇してこない距離に新しく巣を作ってた。


実に申し訳ない。


ただ、前にも言ったが、アクシーズは、雌が妊娠で苛立ってたり子育て中で一切構わなくなったりすると、雄は他の雌のところに行くのも普通だった。


さりとてそれがアクシーズの習性なので、俺は何も言わない。


その一方で、人間の場合は、『動物とは違う!』ということで、基本的には同じ相手と長く添い遂げることをよしとした。


それが果たして本当に正解なのかどうかは俺には判断できないし、何人も<嫁>を作った俺があれこれ言うのも違う気はするものの、まあ、


『惚れた相手が嫌がることはしないほうが無難』


とは思うかな。


ひそかふくはそもそも習性として<ハーレム>を築く種だったから複数の雌で一人の雄を共有するのはむしろ当然だったし、じんようも、妊娠中や子育て中に雄が何をしてようが一切お構いなしという習性を持ってるから、やっぱり人間ほどは拘ってもいないんだろう。


が、シモーヌはさすがに違うよなあ。


だけど同時にシモーヌも俺がこのハーレムのボスだということを分かった上で結婚してくれたわけで、その辺りについてはとやかく言ってこない。しかしだからと言ってそれに甘えるのも違う気もする。


俺自身ももう何人もを同時に相手にするのは辛いと思うので、もし誰かに言い寄られても、それを受け入れるかどうかはシモーヌにお伺いを立ててからにしよう。ずるい考え方かもしれないが、他に思いつかないし。


と同時に、エレクシアに対する俺の<想い>については、


「分かっていますよ。彼女を愛してるあなたを私は受け入れたんです。


と言うか、私がいるからって彼女を蔑ろにするようなあなたなら、私は好きになっていません」


と言ってくれてる。


無論、女性としての正直な気持ちでは複雑な想いもあって当然だと俺も思う。


ただ、


『私がいるからって彼女を蔑ろにするようなあなたなら、私は好きになっていません』


というのも正直な気持ちなんだろうな。


新しい相手が見付かったからってあっさり乗り換えるような人間だと、自分もいつ見限られるか分からないしな。


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