翔編 結婚制度

以前にも触れた、


<複数の妻を娶るのを法律で認めている惑星>


のことを思い出す。


そこは、複数の女性と同時に結婚することを認める代わりに、


『すべての妻を等しく愛すること』


を義務としているという。しかもそれは非常に厳しい義務で、妻の側から、


『等しく愛してもらえてない!』


と訴えられるだけで、最悪、懲役刑すらあるとのこと。


いやはや、ゾッとするね。


ひそか達がいた頃も思ったが、すべての妻を等しく愛するなんて、到底できる気がしない。今、シモーヌがいる状態であの頃の関係を再現したとしたら……


俺は間違いなくシモーヌから訴えられるだろうなあ……


並みの度量の男じゃ、妻全員を等しく愛するなんておよそできないと思うよ。それができるのはほんとに例外的な存在だけだと思う。


事実、一夫多妻制を認めてるその惑星でも、実際に一夫多妻を実現してる男なんて数えるほどしかいないそうだ。


なにしろ、妻の方の一方的な訴えで夫を陥れることができてしまう以上、間違っても妻に『夫を陥れてやろう』なんて思われないような男でなけりゃいけないわけで、そんなことができるのはやっぱり普通じゃないって。


だから普通の男は、おとなしく一人の女性を愛するようにした方が無難ということだろう。


だが同時に、健康寿命が二百歳を越え、二百歳直前くらいまでは若いと言っても差し支えない体を維持できるようになったことで、『結婚生活百年』などという夫婦もいたりするようになると、さすがに『結婚生活百年』を維持できるような夫婦もまた例外的な存在なんだろうな。


そんなわけで、結婚後数十年で離婚。お互いに別の相手と再婚ということも普通になっている。


正直、現状では他に相手を見付けることも容易じゃないここじゃ離婚はともかく再婚なんて現実的じゃない。


などということも、シモーヌと結婚したことで改めて考えさせられたよ。


と言うか、身近に考えさせられた。


シモーヌとの関係がこの先どうなっていくかはまったく分からないものの、少なくとも俺は彼女のことを信頼しているし大切に想ってる。少なくとも彼女が俺を必要としてくれる限りはそれに応えたいと思う。


俺みたいなこれといった取り得もない盆百な人間を愛してくれてるんだ。感謝しかないよ。


そんなことを考えながら、すい清良せいらの様子を見守る。


と同時に、いずれここにできていくであろう人間社会を考えた時、婚姻関係についてもしっかり制度化しなきゃいけないんだろうなあとも思う。


ただ、ここに根付いた種をルーツに持つ人間達は、その辺りも俺達とは違っていくんだろうか? それとも、俺達と同じように基本的には一夫一妻制をとることになるんだろうか?


ちょっと興味があったりもする。


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