翔編 いつか来る別れに
この辺りの感覚は人間と違ってて当然なので、俺としてはもちろん口出しはしないつもりだ。
にしても、なあ……
ともあれ、これで
そんなわけで、
うん、いつもどおりのただの思い付きだ。
仲良くいてくれれば、おじいちゃん、言うことないよ。
と同時に、自分が順調に年齢を重ねていることを実感させられる。
老化抑制処置のおかげで体そのものが衰えたという実感はないものの、それなりの年齢なんだなあとはね。
でもそれは同時に、息子や娘達が年齢を重ねていっているという実感でもある。
まだまだみんな元気なものの、
という感傷も抱きつつ家に帰る。
すると、
「おかえりなさい」
「おかえり~♡」
「おかえりなさい」
「おかえりなさ~い♡」
「おか~♡」
シモーヌ、
ああ、いいなあ……
と同時に、今日は、
「おか、えり。おとさん」
しかし、ビアンカが窓を開けて、
「おかえりなさい!」
と声を上げると、ビクッと体を竦ませていた。それでも、
こうして家族に出迎えられて、俺は自分が満たされるのを感じてた。
そして傍らに立つエレクシアにも、
「ご苦労様。いつもありがとうな」
素直に感謝の言葉が出る。
が、エレクシアの方はやっぱり、
「いえ、これが私の役目ですので」
お決まりの反応だ。
でもやっぱりそれがいい。
家族だもんな。愛想よくしてくれなくてもそういうものだって分かる。
そして、いつか来る別れに対しても、こうして満たされているからこそ腹も括れる。
感謝してるからこそ、やりきった、生ききったと感じられれば、『お疲れ様』とも思えるんじゃないかな。
無論これは、俺個人の<死生観>だ。他人も同じように感じる必要はない。
だが、死が避けられないものであるなら、別れが回避できないものであるなら、そのための心構えは持っているに越したことはないとも思うんだ。
その現実と向かい合うことができればこそ、避けようのない死に別れで壊されてしまうことのない幸せを掴むこともできる気がする。
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