翔編 何やってんだろうな

新暦〇〇三十年十二月十九日。




さていよいよ今日は新しい集落候補地で井戸掘りだ。そのためのマシンをエレクシアがローバーに積み込んでくれる。


と言っても、マシン自体が自力で歩けるロボットなので、自分で乗り込んでくれるけどな。


ただ、サイズがギリギリだったのでちょっと一苦労だった。


俺は別に傷が付いても構わないから強引にでも入ってくれればよかったものの、ロボットはその辺り融通が利かない。ローバーに傷を付けないようにじりじりと乗り込む様子に焦れたり。


「トレーラーで引っ張っていければいいんだけどなあ」


とは思うが、いかんせん道が悪すぎて、ブランゲッタも積んでないトレーラーじゃ下手すると横転しかねない。こういう時のために、平ボディのトラックもほしいかな。いや、それよりも多脚式輸送車両の方が便利か? 


<多脚式輸送車両>というのは、その名の通り、タイヤを備えた複数の足を持つ、輸送用のロボット車両だ。


ベースになっているのは、アミダ・リアクターを備えた<多脚式移動電源>と呼ばれる、自力で移動できる電源としてのロボットなんだが、そのボディの上部が荷台になっているものだな。


とは言え、アミダ・リアクターは作れないので、代わりに大容量のリチウムイオンバッテリーを搭載して二日程度は稼動できるものを、今度作ってもらおうか。


ああでも、そこまでのものだとまたちゃんとしたものができるまで時間がかかりそうだな。とは言え、必要なものは今後に備えて作った方がいいのか。


が、


『そう言えばコーネリアス号の工作室のキャパシティ、現状でもかなりいっぱいいっぱいなんだっけ…』


そりゃそうだ。あれはあくまで一時凌ぎの設備でしかない。一般的な製造工場じゃないんだからな。


いかん。ここが人間の悪いところだ。


『必要かも』


『あった方が便利かも』


と思うと、後先考えずに作ってしまって余計な問題を引き起こしたり、作ったはいいが実際には使えなくて無駄になったりということも歴史上あったじゃないか。


……いかんいかん。頭を冷やさねば。


実際に必要になったら、今あるものじゃどうしようもなくなったら、その時に改めて考えよう。


井戸掘りマシンだって時間は掛かったが積み込めたじゃないか。


工夫すればなんとかなるうちはなんとかしよう。


と自分に言い聞かせつつ、出発する。でも、道すがら、


『必要っちゃ必要なんだよな……』


などと未練がましく考えてしまってた。


え~い! しっかりしろ、俺!


で、途中、アリゼとドラゼの姿を確認して、


『頑張ってくれてるな…』


と感心して、その近くでりょうの姿も確認して、


『元気でいてくれてるな』


とホッとして。


『人間ってのはホントに余計なことを考えてしまう生き物だよな……』


ってな調子でしみじみもする。


いやはや、何やってんだろうな、俺。


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