翔編 AIの子孫

現在、地球を基準にすると六十世紀。人間が火星を開発して移住を始めたのが二十五世紀頃とされていて(記録の正確性に疑問符が付く部分があるらしく諸説あり)、三千数百年前には既に、AIのレベルはメイトギアを当たり前に運用できるようになっていたそうだ。


ただし、当時はまだAIに対する諸々の取り決めが今よりずっと曖昧だったらしく、AIによる社会の監視網も十分に機能していなかったことで、テロが頻発していたという。テロの準備をしていても、AIがそれを通報するというシステムが機能していなかったんだろうな。


今ではそれこそ、AIがまったく存在しない場所など、ロボット・AI排斥主義者や科学文明否定論者のコミュニティを除けば、トイレの中とそういうのを気にする人間がAIを装備する機器を持ち込まないようにした寝室くらいじゃないかな。


だから、テロリストの中には、夫婦や恋人に偽装して寝室に集まって密談する者もいるようだ。


が、あんまり性質たちのよろしくないホテルなんかだったりすると、下手するとトイレや寝室にまで監視カメラ代わりの機器が仕掛けられてたりもするとも言われてる。


まあそういうところは利用者の質もアレな場合が多いんで、用心のためという一面もあるのか。


とにかく、六十世紀現在、いや、セシリアやメイフェアやイレーネが現役だった三十八世紀頃のレベルのAiまでは無理でも、ある意味では黎明期とも言える頃のものでも用意できれば、現在ほど高度に制御された社会を期待しなければロボットを運用する程度ならできるということだ。


そのための試作品も現在作ってもらってる。


AIがAIを作るんだ。


子孫を残すみたいにな。これは人間社会でも人間の管理の下で行われてることだな。


完全に自分と同等のもの(あくまで大きさは別として。小型化するには必須の材料がここでは手に入らない可能性が高い)を作るのは遥か先になるとしても、アリスシリーズとドライツェンシリーズを制御できる程度のものは遠からずできるだろう。


ちなみに、現時点で確認されてるこの惑星で得られる材料で、コーネリアス号のそれと同等のAIを作ろうとすると、家一戸分程度のサイズにはなると想定されてる。


なお、コーネリアス号のAIのメインフレームは、机一個分程度のサイズだそうだ。そこに補助的なシステムがいろいろくっついてるので、実際には一部屋分くらいの大きさにはなってるらしいけどな。


あと、簡易とはいえAIの製造が可能なのはあくまでコーネリアス号の工作室があるおかげ。それを備えてない光莉ひかり号だけでは、エレクシアの手を借りたとしても無理。AI用の集積回路を作る手段がない、それ以前に材料を加工する手段がないからな。


と、そこまで行くのはまだまだ先だ。今はとにかく井戸掘りの下準備なんだよ。


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