翔編 独自の文明の基点

アリゼとドラゼ、さらにりょうの様子も確認できて、俺とエレクシアはさらに先に進んだ。


そして密林を抜けて、砂漠地帯に出る。


<砂漠地帯>と言っても、砂ばかりってわけじゃない。<荒野>と言った方がニュアンス的には伝わるだろうか。植物の少ない、岩と瓦礫と砂の平原だ。草原や密林がある辺りは大きな河が近くにあることで植物が繁茂し易いわけだが、元々土壌が痩せている上に近くに大きな河がないことで砂漠化しているようだ。


雨はそこそこ降るもののそれもあまり留まることがなくすぐに流れてしまったり、水はけが良すぎることで地中深くに滲みこんでしまうというのもあるらしい。


その分、地下水は割と豊富だと推測している。今回はそれを確認するための調査の下調べとしてきた。


集落を作るのなら水は当然必須だ。


周囲よりは少し小高くなって見晴らしのいい場所を整地し、住宅が建て易いように平らな土地を確保した、新しい集落候補地へとやってきた。


以前にも言ったとおり、密林は緑が豊富な分、生き物も多すぎるくらい多いからな。当然、虫も多い。効果的な虫除けがあるから俺はそれほど気にならないが、それでもやっぱり多少は虫も現れる。そういうのが苦手な人間も出てくるかもしれないし、その辺りのシミュレーションのために取り敢えず集落を作ってみようということだ。


あと、ここは俺達の<家>以上にコーネリアス号から離れている。コーネリアス号に搭載されている<ブランゲッタ搭載型ヘリ>が使えればひとっとびではあるものの、ローバーでとなるとそれなりの時間を要する。だからこの集落自体で様々なものを作れるようになればというのもあって、そういう意味での様々な試みをしたいと思ってるんだ。


まずは井戸を掘って水を確保するのが大事なんだが、いずれは<溶鉱炉>を建設して鉄を作り、それ以外にもこの惑星で確保できる資源を用いて様々なものを作り出せる、


<惑星朋群ほうむ独自の文明の基点>


としたいと思う。


人間の数がまだ少ない現状でそこまでするのは気が早いと思うかもしれないが、正直、コーネリアス号頼みの今の状態はある意味ではリスクでもあると思う。だからこそ、アリスシリーズとドライツェンシリーズは、なるべくここで調達できる材料を多く使って製造できるようにしたんだ。


エレクシアや光莉ひかり号のレベルはもちろん、セシリアやコーネリアス号のレベルのAIを作ろうにも、そのために必須の鉱物等は一部の惑星でしか算出されてないので現状では再現できないが、人間が火星を開発した当時(二十五世紀頃)のレベルのAIまでなら、ここの資源を用いてコーネリアス号の工作室で再現できることはシミュレーションされている。


まあ、エレクシアや光莉ひかり号のそれに比べればそれこそ玩具おもちゃみたいなものではありつつ、あの当時ですでにそれでメイトギアが運用できてたそうだから、十分、アリスシリーズとドライツェンシリーズを運用できる可能性はあるんだよな。


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