走・凱編 意図
新暦〇〇二九年六月二十四日。
それはいったい、どんな感じがするものなんだろうか…?
が、今はまだそれを問い掛けることはしない。それができるのは、たぶん、<コーネリアス号乗員、ビアンカ・ラッセとしての記憶>と折り合いが付けられてからだろうな。
それでも、少なくとも表面上はかなり打ち解けてきてくれた感じにはなっていた。俺の前にも、ちゃんと姿を見せてくれる。
ファンデーションを塗ったことで表情とかも分かり易くなった。
ただ、これはシモーヌも同じなんだが、血液からして透明なので、実は『顔を赤らめる』ということがない。逆に体調が悪くても『青褪める』ということもない。そういう部分での変化は顔色からは察知できないので、要注意だ。
もっとも、その辺りについてはそれこそメイトギアならバイタルサインから容易に読み取れるので、あまり神経質になる必要もないが。
ただ、
人間の形をしている部分の臓器の多くはただの痕跡に過ぎずほとんど機能していない、あるいは機能していても補助的な役目でしかなく、心臓についても、本体の部分との血圧差を調整する役目をしているというのが分かっている。本体の方の血圧は平常時で百二十から百七十くらいだが、そのままだと人間部分には危険なので、九十から百四十くらいに調整しているそうだ。それでも普通の人間に比べれば若干高めではあるものの、
自然発生した生物としてはいささか非合理的過ぎるその構造は、異なる生物をわざと掛け合わせて特異な生物を生み出そうという意図すら感じるというのが、シモーヌの見解だった。
そう、すでに存在している生き物を外科手術によって合成するのは極めてハードルが高いものの、
「それぞれの生物の遺伝子を採取し、それを再現することで元から<そういう生物>として誕生させれば失敗も少ないかもしれない」
とも彼女は言ってたな。
もちろん、中には
その辺りについても今のところは推測の域を出ないにせよ、今後もビアンカのような例は生まれる可能性もある。と言うか、たぶん、俺達が把握していないだけで、相当頻繁に生まれてるはずだ。
それが
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