走・凱編 別の種

そうかいりんはレオンとしての生き方に戻っていったが、さいはまったくその気配がない。と言うか、ほむらとラブラブな毎日を送るのに忙しくてまったく興味もないようだ。


相変わらず子供ができる気配はないものの、さいほむらもそれを気にする様子もない。だからもう、この二人は完全に<別の種>として生きている感じだろうか。


二人がそれでいいなら俺は口出ししない。家にいついてしまってはいるものの餌の確保は自分達でしてるから、完全に、


<たまたま同じ場所に巣を作っただけの別の種>


として生きてるということだろうな。


それで言えば、しんも似たようなものだ。レオンでありながらヒョウ人間パルディアげんと結ばれ、死産だったれんを含めこうかんという三人の子をなしたが、こうかんも、パルディアとしての生き方を選んだらしく、密林の中を主なテリトリーとしてた。


俺達の<縄張り>であり他の動物があまり近寄ってこない辺りを自身の縄張りとして、すでに密林の中で生活している。まだパートナーまでは見付けていないが。


それでも時々帰ってきていたのが、ビアンカが来てからはまったく帰ってこなくなった。無事なのはドローンなどで確認が取れているものの、ビアンカに対しては強い警戒心を抱いている感じだな。


だが、それもいい。好きにすれば。


俺がビアンカを受け入れてるからって俺の子供達全員が同じようにする必要もない。そのために別のところに住んでいるというのもあるしな。むやみに敵対さえしなければそれでいいんだ。


そのこうかんも、野生の厳しさはありつつも、何と言うか穏やかに暮らしてる。あまり動物が近付いてこないと言ってもまったく近付かないわけじゃないし、少し離れたところにならそれなりに来るから、獲物に困っている様子も特にない。


あと、駿しゅん達とも割りと上手く住み分けしているようだ。特にかんに至っては仲がいい。時々、じゃれて遊んでる時さえある。ここにいた頃は、レッド達については襲ったりしなかったもののまだそこまでじゃなかった気がするが、かんなりの接し方として身に付けていったんだろうな。


今日も、駿しゅんの群れの子供達と遊んでいる。


向こうもかんが俺のところで育ったやつで自分達を襲うつもりがないことは分かっているから、そんなに警戒もしてない。


だが不思議なことに、他のパルディアを見ると明らかに戦闘体制を取るんだよな。もちろん密林の中から様子を窺っていことで見知ってるというのもあるんだろうが、それに加えて単に外見ではなく、自分達に敵意を向けているかどうかを察している可能性もあるな。


いずれにせよ駿しゅんの群れの子供達とじゃれあってるかんは、とても楽しそうだ。でもそれは同時に、お互いに狩りの練習にもなってるんだろうなという印象もある。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る