走・凱編 生まれつきの性格

そうは、けいかい以外は、正直、どうでもいいと思っているフシもある。しかし同時に、けいかいを守るためには群れの存在が欠かせないとも理解している。だから守る。


野生の厳しさと人間的な合理性を兼ね備えているんだ。それがすごいと思う。


せんにイジメられているかいに寄り添いながら励ましながら一緒に耐え、ただ復讐するのではなく、群れを掌握するための方策を練ってたんだろうな。


強い雄を求めてたせん達の期待に応えるために入念な準備をしてたというのもあったんだろう。


群れを掌握するためには、せん達を納得させてやらないとだめだろうし。


だが、それだけに上手くハマれば大きい。そしてその狙いは見事にハマった。


とは言え、そうの活躍だけが立派だったわけじゃない。生来のヘタレな部分を補って余りあるかいの成長ぶりも大きいはずだ。


だから思う。


『生まれつきの性格だけですべてが決まってしまうなら、かいのこの成長もなかった』


ってな。


とにかくかいは、生まれつきのヘタレやすい性格を、恵まれた体を活かすことで補おうとしてる。


かいかいなりに努力してきたんだよ。


とは言え、それを促したのもそうだったらしいが。


「お前は強い。お前は強い。でももっともっと強くなれ。とにかく食いまくって体を大きくしろ。その力で相手をぶっ飛ばせ」


的なことを言い聞かせていたようだ。なお、人間の言葉に意訳してるからちょっと言い回しが多少凝ってるかもしれないが、レオンの言葉も語彙は少ないから、直訳するともっと幼児っぽい言い方になると思うけどな。


でも、<良いお兄ちゃん>じゃないか。


しかもかいの方も、そうの言うことをよく聞いてよく食べよく動き体を大きく強くしていったんだ。


正直、この二人の組み合わせでないと、こんなに上手くはいかなかった気がする。いいコンビだよ。


なんにせよ、そうかいは、お互いに力を合わせることで、困難に打ち勝ってきた。


野生の<普通>で言えば特殊なケースかもしれないにしても、それでいいと思う。<例外>っていうのはなんにでもあることだ。


加えて、そんな例外が上手くいっているという実例が、ビアンカにとっては意味を持つかもしれない。


『怪物のような外見を持つ彼女でも幸せになれるという例外は有り得る』


っていうな。


怪物のような外見を気に病むっていうのは、結局はそういうことだろう?


『こんな自分はこの世では受け入れてもらえない。疎まれる。恐れられる。たとえ表面上は恐れられなくても、受け入れられてるように見えてても、幸せにはなれない』


っていう<一般論>が引っかかるからだろう?


だから、


『どんなことにだって例外はある。それで考えれば怪物のような姿をした人間でも幸せになれるという例外だってあってもおかしくない』


ってことでね。


そうかいは幸せそうにしてるじゃないか。だったらビアンカも今の自分を誇ってくれればいいんだ。幸せになってくれたらいいんだよ。


加えて、りんだって、母親は違うと言っても自分の実の兄と愛し合ってっていう<例外>から、改めてレオンとしての幸せを掴んだ。もちろん普通の人間じゃないから<人間の思う常識>とか<インモラル>なんてのは当てはまらないにしても、あらたはレオンじゃなくパパニアンだったからな。そういう点ではやっぱり普通じゃないし。


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