走・凱編 ボスの資質

そうけいに優しかった。彼女が不安そうにしてるとずっと寄り添い、体を舐めてやったりしていた。


けい以外の面倒を見ていたのは、正直、<ついで>だったのかもしれない。


それでも、別に雑に扱ったりするわけではないので、ゆうなどはとても懐いていた。


とは言え、ボスを喪った成体の雌達からは邪魔者のようにも思われていて、邪険に扱われてりもしていたんだ。


そうして成体の雌が一人二人と群れを抜けていっても、そうは引き留めようともしなかった。


かいの方は、結構イジメられていたのにも拘わらず、去っていく雌の後をしばらく追ったりしてたのにな。


自分がイジメられるのは弱いからだと納得していたらしく、恨んだりはしてないようだ。かいせんに好かれたのも、自分の弱さを理解していて、ヘタレなりに強くなろうとしていたところが、そして実際に強くなっていったところが認められたのかもしれない。


しかしそうは、『去る者は追わず』を徹底して、自分の力でも何とかなりそうなくらいの群れの規模にしようとしていたフシがある。


子供の頃に様々な種族でもある兄弟姉妹達と一緒に暮らし、ほまれに次いで年長だったことでリーダーとしての諸々を学び取っていったのかもしれない。


当時はただひたすらバカなことをしてるようにも見えたが、それも経験だったんだろう。


そして、かいがイジメられている様子を見ながら、せん達の能力やクセを見抜き、同時に自身も狩りによって、力の使い方、体の使い方を学び、十分な力が付いたと判断したことで反撃に転じたらしかった。


この辺りは、イレーネやメイフェアが、そうけいかいとの会話を聞き取ったことを基にした推測である。


せん達にイジメられているかいの体を舐めつつ、


「俺達は弱い。でもいつか勝てる。それまで待ってろ」


と話しかけていたそうだ。かいは、体も大きく力も強く、成長と共にそれも増していくこともそうは見抜いていて、文字通り<雌伏の時>を過ごしていたのかもな。


また、そうがそんな風に言ってくれてたからかいも耐えられたのかもしれない。


我が子ながらまったく大した奴だよ。


ただ、そうがそんな風にしていられたのも、けいがいればこそなんだろう。彼女がいなければ、あの時、かいと一緒に俺のところに帰ってきてただろうし。


また、けいそうのことを支えて、あいつの気持ちをがっちりと掴んでいる。<ただただ可愛いだけのヒロイン>じゃないということだろうな。


レオンの雄は、若い頃は修行の意味もあってか雌と一緒に積極的に狩りに出ることが多い。だからそうも当然、けいと一緒に狩りに出て、そこでけいは、そうと力を合わせて勇猛に獲物に向かっていった。それどころかそうと絶妙な連携を見せる、そういう意味でもパートナーだった。その息の合い具合は、かい以上だったかもしれない。


そういう部分も察していたから、けいに惹かれていたのもあるかもしれないな。


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