走・凱編 走と恵

そうがバランス型のボスだとするなら、レオンの平均よりもかなり体が大きく力も強く、ゴリ押しで戦うかいは、さしずめ<パワータイプのボス>とでも言ったところだろうか。


ただし、根がヘタレなところは今も治ってはいない。だから力で圧倒できる相手には強いものの、勝てないと見るや途端にヘタレる。


とは言え、人間の場合は『情けない』と受け取られるそういう部分も、野生の場合は『勝てない時には無理をしない』という意味で有能であり、しかも見極めが早いので結果として手遅れになる前に逃げられるという面もあった。


しかも、本質的に優しいしな。その点で言えば、むしろそうの方がドライだろう。群れ全体を守るためなら個を見捨てるということもたぶんできる。それに対して、かいはとにかく皆を逃がそうとする。


どちらが正しいというわけでもない。状況によって適切だったり不適切だったりするだけだろう。


そうのやり方は場合によっては仲間の信頼を失う可能性があるが、かいのやり方は下手をすると仲間と一緒に共倒れになる可能性もある。


しかしそういう風に<個性>とも言うべきものがあることで、同じような状況になっても生き延びる者が出てくるということだろうな。皆が皆、同じようなやり方をしてたら同じような状況に陥った時に同じようにダメになる危険性が高いだろうし。


だから俺は敢えてやり方については口出ししない。シモーヌも口出ししない。そうかいに任せている。


でもやっぱり、ドローンやドーベルマンDK-aによる援護は行うけどな。


ちなみに、りんの方はと言えば、形の上ではゆうがボスということになるはずなんだが、実質的にはりんが主導権を握っている感じだろう。いわゆる<かかあ天下>ということかもしれない。


これは、まあ野生でもたまにあることかもしれないが、りんの場合は彼女が俺の子として育ったことに加え、ゆうも、幼い時に父親である前のボスを亡くしたことでそれ以降はそうかいを父親代わりに育ったことで間接的に影響を受けてる可能性があるな。


それが良いことか悪いことかは一概には言えないにしても、現状では特に問題もなさそうだから取り敢えずは様子見だな。りんゆうの関係も良好で家族仲もいいし、縄張りを接するそう達とも上手く住み分けができてるしな。




で、ビアンカが嬉しそうに見ているそう達のことについて、改めて詳しく触れていこう。


まずはそうけいについてだな。


二人のことはこれまでにも何度か触れてきてるが、前のボスを亡くしてからのことについて詳細を語ろうか。




オオカミ竜オオカミの群れの襲撃により前のボスとボス候補の雄を喪ったことで、群れは崩壊の危機にあった。何人かは実際に群れを見限って離れ、他の群れへと合流している。


しかしまだ幼かったけいはどうしていいのか分からず、その場にとどまっていたようだ。それを支えたのがそうだった。


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