走・凱編 家族

シモーヌは続ける。


「彼女達は、メイトギアの、エレクシア、セシリア、イレーネ。何か困ったことがあったら彼女達に相談してください。


それと、イレーネが抱いているのはれい。彼女も密林で保護されました。


他にも、今は家の中にいて出てこないけど、ひかりの夫でひなたの父親のじゅんあらたうららと同じ種族のほむらほむらのパートナーのさい


あとは、今は出掛けててここにはいないけど、しんえいもいます。


で、エレクシアと一緒にあなたを救助に向かったのが、ここの家長の錬是れんぜ


これが私達の<家族>」


<家族>。シモーヌは確かにそう言った。彼女がそう言ってくれたことで、俺は思わず頬が緩んでしまった。


一応、隣人として暮らしてはいるものの、それはもう、それぞれ別の家に住んでいるだけで、確かに俺達は全員、家族みたいなものだ。


ところで、ビアンカを襲ったのと同じボクサー竜ボクサーでもあるレッド達はと言うと、見慣れない大きな獣が入ってきたことに気付いて、密林の中に隠れてしまった。今も木の影からこっそりと様子を窺っている状態だ。


俺達がビアンカに対して敵対行動を見せてないことから危険な外敵だとまでは思ってないかもしれないものの、だからといってさすがに馴れ馴れしくもできないだろう。


そうしてレッド達が姿を隠してくれてるおかげで、ビアンカがさっきのことを思い出してレッド達と敵対することが避けられているのは幸いだった。この辺りも段階を踏んで、レッド達が他のボクサー竜ボクサーとは違うというのを理解していってもらわないとな。


もっともそれも、人間としての感覚があるのなら、<野犬>と<人間に慣れている犬>は違うということも分かるだろうし、対応さえ間違わなければそんなに大きな問題にはならないだろう。万が一衝突があっても、エレクシアやイレーネが止めてくれるしな。




なんてことを俺達がしている間も、そうかい達は、いつも通りの日常を送っていた。


そうの第一子のとうと、かいの第一子で俺にとっては初孫になるえんけんは、もう結構大きくなっていて、いつ巣立ってもおかしくなかった。


と言うか、しんの子で、とうえんよりも後から生まれたこうかんがほぼ巣立ったような状態だから、別にもう巣立ってても何もおかしくないんだよな。


でも、雄であるとうえんは今でもそれぞれ父親であるそうかいに結構激しくじゃれついたりしている。これは、狩りの練習でもあると同時に、ボスの座を狙う雄として己を研鑽しているというのもあるんだろうな。


巣立って他の群れでボスに収まるのか、それともこのままここに居着いてそうかいからボスの座を奪うことになるのかは分からない。ただ、そのどちらであってもこれ自体がレオンとして当然の生態なので、それについては俺は見守るだけにしたいと思う。


でも、少なくとも今はすごく仲がいい。とうえんけんも、弟妹達を大事にしてくれてるしな。


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