明編 元気に育って
人間が快適に生きていく為には、電気が欠かせない。快適を求めて次々と家電製品を作っていくことになるだろうな。しかし現時点では人間社会があまり大きくなると電力の確保が難しくなる。
もっとも、これ以上の暮らしというのは、俺にはピンとこないけどな。今で十分、満ち足りている。
強いて言うなら娯楽としてのコンテンツが寂しいと言えるのか。でも俺としてはやらなきゃいけないことが山ほどあるし、余暇としては子供達の様子を見てるだけで十分に楽しめる。
今も、
電力問題は今後の課題ではあるものの、まあ今すぐ心配になるわけではないから、実際に人間社会でできて、それが拡大し始めた頃に改めて考えればいいか。
<人間らしい文化的な生活>も考えなきゃいけない一方、この子達にしても、現時点では体を全力で活用する遊び方が必須だ。そうやって体を使ってやらないと、元々の能力が活かしきれない。エレクシアやイレーネに守ってもらうだけじゃ自分を守り切れないような環境である以上、自分の身は自分で守れなきゃいけない。
それもいずれ変わっていくとしても、少なくとも今は必要なことではある。
だから、目いっぱい体を使って遊んでもらえればいい。
まあそういう実利的な面でも必要なんだが、単純に、楽しそうにきゃあきゃあと声を上げながら笑顔で遊んでる子供の姿ってどうしてこんなに楽しいんだろうって意味で見ていたいと思う。
もう少し体が大きくなってくればそれこそまた家まで壊すくらいになってくるだろうな。でも、むしろ嬉しいんだよな。元気に育ってくれてる証拠だから。
ちなみに、以前にも話したかもしれないが、今の人間の基礎的な体力は、二十一世紀初頭頃のそれとさほど変わっていないそうだ。便利な生活に慣れることでどんどんと体力が低下し、いずれ歩くことさえ機械の補助がなければままならなくなる。なんて懸念もされていたそうだが、実際にはさすがにそれはマズイと思ったのか、ある程度のところまで行くと今度は意識してトレーニングをしたり、片道三十分程度の近距離なら積極的に歩いたり、中距離の移動は自転車を使うようになっていったりしたんだと。
だから、公共交通機関が整備された都市部では移動に自転車を使う者が多く、場所によっては事前に登録された物資輸送用以外の自動車の乗り入れが禁止されているところすらある。無許可で乗り入れようとすると、自動車もAI制御だから止まってしまうんだ。
本来はAIで制御されていないような大昔の内燃機関を用いたクラシックカーも、エンジンの制御を行うAI搭載の装置を取り付けないとそもそも使用できない。
他の地域から自動車に乗って来た者は、郊外に設置された駐車場に自動車を留め、公共交通機関に乗り換えるか無料のレンタサイクルを使うかという形になるんだよ。
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