明編 子供に与える影響

ここに<人間社会>を作るとすれば、考えなければいけないことはそれこそ山ほどある。


<地球>に築かれた人間の世界で起こった様々な問題について、な。


延々と思考することは苦にならない俺だからこそ、考えたい。




正直俺も、人間社会にいた頃には政治家とかに対して散々好き勝手言ってきたクチだ。


『どうしてそこで決められないんだ! この無能が!』


とかな。妹のことがあったから余計に歯痒く感じてたこというのもある。


ただ、いざ自分がこうして、決断し責任を負わなきゃいけない立場になると、なるほど簡単には決められない時もあるよなっていうのが実感できてくる。


今はまだ俺の家族しかいないし、家族にだけ責任を負えばいいから、


『家族のためだったら決断できる! 責任も負える!』


とは思えるものの、全く見ず知らずの他人に対しても同じようにできるかと言われたら、正直、俺には無理だ。そんな大変な立場には就きたくないと思ってしまう。


だから今では、政治家とかに対しても、


『よくそんな大変な仕事やってられるな……』


って感じで同情的な気分にはなる。AIに頼りたくなる気持ちも理解できる気がする。


なるほど、経験してみないと分からないことというのは多いよ。


子供を育てるということについてもそうだ。責任を負わなくていい立場から見てる時と、自分が責任を負わなくちゃいけない立場で見てる時はまったく違う。


なにより、実際に子供達(特にひかりあかり)のことを見てると、子供達が単なる<動物>じゃないことが実感できた。


ものすごく、本当にものすごくしっかりと、親である俺の様子を観察してるのが分かるんだ。


それはそうか。子供達は自分が生きていく為に必要な情報を周囲から得るしかないんだからな。特に、親から。


親の振る舞いを真似ることで、子供は人間としての生き方を学んでいくんだよ。


ほまれ達のように元の種族としての形質が強く出てる方は、俺が敢えて<人間らしさ>ってものに拘らずに、母親の方からそれぞれの種族としての在り方を学んでもらうようにしてたが、ひかりあかりについては姿からして<人間>なので、ひそかようが我が子として認識できずに、ほとんど関わろうとしなかった。


そうなると、当然、俺とエレクシアとで育てることになる訳で、ひかりあかりも俺やエレクシアの振る舞いを注視することになる。あかりの場合はさらにシモーヌからもだが。


本当に、親である俺の振る舞いを真っ直ぐに見てたんだ。だから、親の価値観とかの多くを子供も学び取ってしまう。


しかも怖いことに、親が、普段、人前では見せないようにしてる<裏の顔>も、子供はよく見てるんだ。


『親が他人をどんな風に見てるか』


なんていうこともな。


他人を見下し、嘲り、蔑ろにするような振る舞いを子供の前で見せると、子供も『そういうもの』として学習してしまう。


他人の存在を疎かにするような振る舞いを子供の前で見せてると、子供も無意識のうちに他人を疎かにするんだよ。


それを考えるとゾッとする。


エレクシア達メイトギアはその辺りのノウハウを、数千年分蓄えてきているから、決して子供達の前で人間を疎かにするようなことはしない。ロボットだから元々できないというのもあるが、子供に与える影響という点からもそんなことはしないんだ。


エレクシアは前のオーナーが辛辣な対応をするようにカスタマイズしてたものの、それはあくまで表面上のことでしかなく、本当に蔑ろにしてるわけじゃないんだよな。


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