明編 仕返し
叩きつける形の蹴りはどうしても、装甲のような外皮によって威力の大部分が相殺されてしまうが、『突く』感じのそれは、より力を一点に集中させやすく、外皮ごと突き飛ばす形になるので、ダメージが通りやすいようだ。
これは、
自身の強力な身体能力に依存した、やや力任せなところもあるマンティアンの攻撃を、さらに合理的に効率的に効果的な<技>に昇華したことが、
で、自分に襲い掛かってきた若いマンティアンの脇腹に蹴りを食らわせた
蹴られた方は、自分がこれまで味わったことのない攻撃に困惑し、すでに逃げ腰だ。勝てない相手だというのを悟ったのだろう。後はいかにこの場から逃げるかということに全神経を注ぐことになる。
このまま
もっとも、食うつもりなら、脇腹への蹴りに怯んだ瞬間を見逃さず追撃を掛けてとどめを刺していたはずだが、共食いはしない
だから、
人間であれば逃がしたことで<仕返し>も懸念しなければいけないにしても、野生動物は、勝てないと感じた相手には自分から攻撃は仕掛けないのが普通だろう。中には
人間の場合は、武器を手にしたり仲間を集めることで勝てる可能性が出てくることが分かるから諦め悪く仕返しを考えたりするんだろう。
なまじ知能が高いゆえに余計なことを考えてしまうのも人間という生き物の特徴か。
まあ、余計なことを考えてしまうのは俺も同じだが、そこでもう一段階思考を進めて、『他者と無駄に争う』ことの非合理性に気付ければ、仕返しとかしないんだろうになあ。
今回の若いマンティアンもこれに懲りて二度と
と思ってたんだが、<例外>というやつはいつだってあるんだというのを、俺は改めて思い知らされることになった。
翌日にまたすぐ、そいつが
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